日本では4年ぶりの土星食
10月8日の明け方の空で見られました!

土星食の様子をまとめた画像を近日公開します!

画像:
2001年10月8日 03時31分18秒
新潟県南蒲原郡栄町にて撮影

 星食のお話をする前に、天文現象で言う「食」についてお話しておきましょう。文字通り、天体が「食べられる」現象のことをいいます。もちろん、誰かが星をパクパク食べてしまうわけではないので、何らかの自然現象が起きるわけです。

 有名なところでは、「日食」や「月食」があります。日食は、地球からの見かけ上太陽の方向に月が入り込んでくることによって、太陽が月に隠される現象ですね。月食は、太陽の光によって照らされている月が、地球の陰の中に入ることによって見えなくなる現象です。これらの「食」は、宇宙空間での位置関係が相互に直線上に並ぶことによって、遠方にある天体が隠されることを差しています。今年は先日7月5日に部分月食が日本で見られました。


20cmシュミットカセグレン望遠鏡で撮影した土星

 一方、「星食」と呼ばれる現象があります。別名「掩蔽」(えんぺい)とも呼ばれるこの現象は、日食と同じ仕組みで月がその向こう側にある星を隠す現象を言います。もっと広い意味では、月以外の太陽系の天体にも適応されます。ですから、惑星や小惑星などにより、それより遠くにある星を隠してしまう「掩蔽」もあるわけですね。

 月は地球のまわりを約一カ月かけて公転しています。それは地球上から見ると、天球上を少しずつ移動しているように見えることになります。ですから、その日・その時間で月の見える場所は少しずつ違っているわけです。

 天球上を移動している月と見かけ上同じ位置に他の星が重なる場合に、月による「星食」がおきます。月がその星の前を通過することにより、星が隠される現象です。月のどの場所に隠されるかにもよりますが、長くて1時間くらい隠れている時間があります。

 一方、土星は約30年で太陽のまわりを一周する惑星です。望遠鏡で見ると上の写真のようなドーナツ状の輪が見られることで有名です。今年はおうし座付近にいて、7月中旬から明け方の東の空で見ることができるようになってきました。この土星と月が、それぞれ天球上を動いていく中で偶然重なり合うことによって、「土星食」が起こります。日本では、前回は1997年10月16日に全国的に良い条件で見ることができました。

 今回の土星食は、日が昇る前の東の空で起こります。下弦の月よりちょっと前の太った月と土星が接近します。今回の土星食の大きなポイントとして、見る場所によって見え方が違うということがあげられます。福島・新潟より南の地域では土星は月に隠されず、月をかすめていきます。また、土星が月に隠されるか隠されないかの境界線の上では、土星の一部だけが月に隠されていく面白い現象を見ることができます。

 左の図はその地域を示したものです。薄緑色になっている地域では、土星は月にすっぽりと隠されますが、青色の地域では、月の端をかすめていく様子を見ることができます。そして、その境界線の帯状になった地域で、土星の輪や本体の一部だけが隠される様子を見ることができます。

 下の図はその地域を拡大したものです。おおよそこの黄色の帯状の地域でその様子を見ることができます。

土星食が起こる境界線の地域
この他、能登半島の輪島市〜羽咋市・氷見市付近と、島根県の隠岐もこの境界線の中に入ります


 土星が月全体に隠される新潟市では、月の明るく輝いている方から土星が月の後ろに隠れはじめるのは、
3時48分ごろからで、土星の輪の部分から少しずつ隠され、約3分後にすっぽりと隠されます。約10分の4時3分ごろに少し離れた反対側の月の輝いていない方から本体の一部が現れ、約7分かけて少しずつ現れる様子を見ることができます。
 新潟市や仙台市など、境界線から近い北側の場所ほど、
土星全体が隠されている時間は短く、また土星が月に隠される経過時間は長くなります。

 左の画像は新潟市での土星食の様子をシミュレーションしたものです。この他、会津若松での様子と、東京での様子もこちらからご覧いただくことができます。

 通常、星食の観測は、月と星の明るさの差が大きいため肉眼では見ることができません。今回の土星食では0.8等と十分な明るさがありますが、月が大きく明るく、明るい側の縁に隠される現象となるため、今回は双眼鏡または望遠鏡を使ってご覧になることをおすすめします。

●双眼鏡でご覧になる方は、月に土星が近づく3:30ごろから、じっと月を凝視しながらその変化を観察してみましょう。観測場所によって、月の明るい部分と土星の距離が異なりますから、東北北部や北海道では、月から土星が出現するところも確認することができるはずです。

●天体望遠鏡でご覧になる方は、3:30ごろから土星を視野に入れて、輪と月との位置関係や角度などを確かめておきましょう。だんだん月が土星に近づいてくると、月の明るさで土星が見にくくなってきますので、15cm以上の口径の望遠鏡ではちょっと高めの倍率にして月の一部が見えるくらいにすると、月の裏側に入リ込む様子もじっくり見ることができるはずです。
 境界線から離れた場所では、土星が出現するまで少し時間が開きますが、境界線に近い場所では隠れてから再び出現するまではそれほど時間がかかりますから、引き続き視野を良く見ていると、土星の輪の先端から出現してくるのを見ることができるはずです。


10月8日午前4時(東京)の南の空の様子
クリックすると拡大します
月・土星の他にも、木星や土星・冬の星座たちも見ることができます

 星食をはじめとした「食」は、とてもライヴ感覚のある天文現象なので、一度見てみるととても感動するものです。皆さんも是非ご自分の目で空の上で繰り広げられる天体ショーを確かめて見てください!。

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