月に隠される土星と小惑星ベスタにも注目

 星食のお話をする前に、天文現象で言う「食」についてお話しておきましょう。文字通り、天体が「食べられる」現象のことをいいます。もちろん、誰かが星をパクパク食べてしまうわけではないので、何らかの自然現象が起きるわけです。

 有名なところでは、「日食」や「月食」があります。日食は、地球からの見かけ上太陽の方向に月が入り込んでくることによって、太陽が月に隠される現象ですね。月食は、太陽の光によって照らされている月が、地球の陰の中に入ることによって見えなくなる現象です。これらの「食」は、宇宙空間での位置関係が相互に直線上に並ぶことによって、遠方にある天体が隠されることを差しています。昨年は先日7月5日に部分月食が日本で見られました。



20cmシュミットカセグレン望遠鏡で撮影した土星

 一方、「星食」と呼ばれる現象があります。別名「掩蔽」(えんぺい)とも呼ばれるこの現象は、日食と同じ仕組みで月がその向こう側にある星を隠す現象を言います。もっと広い意味では、月以外の太陽系の天体にも適応されます。ですから、惑星や小惑星などにより、それより遠くにある星を隠してしまう「掩蔽」もあるわけですね。

 月は地球のまわりを約一カ月かけて公転しています。それは地球上から見ると、天球上を少しずつ移動しているように見えることになります。ですから、その日・その時間で月の見える場所は少しずつ違っているわけです。

 天球上を移動している月と見かけ上同じ位置に他の星が重なる場合に、月による「星食」がおきます。月がその星の前を通過することにより、星が隠される現象です。月のどの場所に隠されるかにもよりますが、長くて1時間くらい隠れている時間があります。

 一方、土星は約30年で太陽のまわりを一周する惑星です。望遠鏡で見ると上の写真のようなドーナツ状の輪が見られることで有名です。今年はおうし座付近にいて、3月には宵の西空の高いところに見ることができます。この土星と月が、それぞれ天球上を動いていく中で偶然重なり合うことによって、「土星食」が起こります。日本では、前回は今年の1月25日未明に関東から西の地方で見ることができました。

 今回は、宵のやや西に傾いた空で、半月よりちょっと前の月によって土星が隠されます。今回の土星食の大きなポイントとして、見る場所によって見え方が違うということがあげられます。東京・神奈川・長野・岐阜・福井より南の地域では土星は月に隠されず、月をかすめていきます。また、土星が月に隠されるか隠されないかの境界線の上では、土星の一部だけが月に隠されていく面白い現象を見ることができます。

 左の図はその地域を示したものです。青色になっている地域では、土星は月にすっぽりと隠されますが、薄緑色の地域では、月の端をかすめていく様子を見ることができます。そして、その境界線の帯状になった地域で、土星の輪や本体の一部だけが隠される様子を見ることができます。

 下の図はその地域を拡大したものです。おおよそこの黄色の帯状の地域で、土星の一部が隠される様子を見ることができます。





土星食が起こる境界線の地域 主な市を赤印で示しています
この帯状の地域より北側で土星が月に隠される様子を見ることができます。

 土星の全体が月に隠される東京では、土星が月の太陽に照らされていない側から月の後ろに隠されはじめるのは、19時44分ごろからで、土星の輪の部分から少しずつ隠され、約4分後の19時48分ごろにすっぽりと隠されます。そして約15分後の20時03分ごろに少し離れた反対側から輪の一部が現れ、約3分かけて少しずつ現れる様子を見ることができます。
 木更津市や富士吉田市・武生市など、境界線から近い北側の場所ほど、
土星全体が隠されている時間は短く、また土星が月に隠される経過時間は長くなります。また、東北や北海道など境界線から離れた北側の地方では、月に隠される時間も長くなるため、東京に比べて20〜30分程度早く月に隠されはじめることになります。

左画像:1月25日の土星食の様子を家庭用ビデオで撮影
クリックすると月に土星が隠される様子をご覧いただけます(450KB)


 今回の土星食は、空の高いところにあるに上弦の月によって起こり、月の明るさと合せて非常に見やすく条件の良い現象です。都会でも充分見て楽しめる現象ですので、是非ご家族で楽しんでみてください。

 通常、星食の観測は、月と星の明るさの差が大きいため肉眼では見ることができません。今回の土星食では、月が細いことや土星そのものも0.9等と十分な明るさがありますから、肉眼でもその変化を見ることができるかもしれません。でも、双眼鏡や望遠鏡を使うと、土星が少しずつ月に近づいて、そして吸いこまれ、出てくるところをじっくりと見ることができます。

●双眼鏡でご覧になる方は、月に土星が近づく19:30ごろから(東北・北海道では19:00ごろから)、じっと月を凝視しながら土星と月の距離の変化を観察してみましょう。

●天体望遠鏡でご覧になる方は、19:30ごろから(東北・北海道では19:00ごろから)土星を視野に入れて、輪と月との位置関係や角度などを確かめておきましょう。だんだん月が土星に近づいてくると、月の明るさで土星が見にくくなってきますので、15cm以上の口径の望遠鏡ではちょっと高めの倍率にして月の一部が見えるくらいにすると、月の裏側に入リ込む様子もじっくり見ることができるはずです。

 また、天体望遠鏡で見ると、土星の少し東側(空の高いところ)にひとつの星を見つけることができるはずです。この星が小惑星の「ベスタ」です。普段小惑星を見る機会はほとんど無いと思います。この機会にこの小惑星にも目を向けてみてはいかがでしょうか?。茨城・栃木・群馬・長野・岐阜・石川より北の地域では、このベスタも月に隠される様子を見ることができます。土星が隠されるのと違って、小さな小惑星はすっと吸いこまれるように消えていきます。是非その様子も確かめてみてください。


東京での20時06分ごろの様子
望遠鏡の倍率を100倍くらいに
するとこのように見えます

 星食をはじめとした「食」は、とてもライヴ感覚のある天文現象なので、一度見てみるととても感動するものです。皆さんも是非ご自分の目で空の上で繰り広げられる天体ショーを確かめて見てください!。

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