ハッブル宇宙望遠鏡が撮影したオリオン座大星雲中心部
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 冬の星座の王者オリオン座にある「オリオン座大星雲」は、少しでも星に興味を持った方ならいちどは見たことがある天体でしょう。このオリオン座大星雲の中心部では、現在も次から次へと新しい星たちが生まれています。この画像はその生まれたばかりの星たちが集まっている、オリオン座大星雲の中心部にある「トラペジウム」付近を撮影したものです。左側の画像はハッブル宇宙望遠鏡で最も広い視界を撮影できるWFPC2による可視光(人間の目が感じることができる光)の画像で、右側の画像は肉眼では見えない近赤外線の画像です。可視光では見えないたくさんの星たちが、近赤外線の画像にはたくさん写っているのを確認できます。また、可視光の画像で茶色っぽく見えているベール状の星雲が、近赤外線の画像ではその星たちを取り囲むように白くくっきりと写しだされているのがわかるでしょう。

 この近赤外線画像により映し出された星はまだ生まれたばかりの明るく輝き出す前の星たちで、星雲はこれから星になる星間ガスのかたまりだと考えられています。その中でも特に重力の強いところにガスが集まって、トラペジウムのように明るく輝く星を作り出していくのです。


Space Telescope Science Instituts(STScI)/HST Public Pagehttp://oposite.stsci.edu/


ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した球状星団M15
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 上のオリオン座大星雲とは対称的に、年老いた星たちが集まってくる場所もあります。球状星団とよばれているものがそれで、星の一生を終えて輝き尽くした星たちが、お互いに輝くためのガスを求めて集まってくるのがこの球状星団だと考えられています。

 M15はペガスス座にある球状星団で、私たち太陽系から40,000光年彼方にあると言われています。私たちが手にすることができるような比較的小口径の望遠鏡でも、簡単に見つけることができる天体です。白や黄色に見える年老いた星がたくさん集まっている様子がこの画像で見ることができます。画像のやや左上にあるピンクがかった天体は、星の一生を終えてガスを吐き出している「惑星状星雲」と呼ばれるもので、Kuestner 648と呼ばれている天体です。


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ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した「かに星雲」
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 上のM15のようにガスを求めて集まりながら一生を終える星もありますが、ある質量以上の重さの星になると、星の内部で大爆発が起こり、まわりを取り巻いていたたくさんの物質を一気に放出します。これが「超新星爆発」と呼ばれるもので、星の一生のシナリオのうちのひとつです。

 おうし座にある「かに星雲」は、私たちの太陽系から6,500光年の距離に有り、1054年に起こった超新星爆発の残骸が、およそ1000年たった現在、このような姿を私たちに見せてくれています。爆発のときの様子は中国の古記録に残されており、その明るさは金星や月をも越えて昼間でもその姿を確認することができたということです。


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太陽観測衛星SOHOの撮影した2回のCME
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 太陽は約11年の周期で活動が活発になったり衰えたりしますが、現在はその活動の最盛期で、太陽面に様々な変化が見られます。今年6月6日と7月14日の2回、太陽周辺部のコロナが内部からの爆発的なエネルギーの発生により吹き飛ばされてしまうCME(Coronal Mass Ejection)という現象が起こり、その影響で地球でも地磁気の異常が発生する恐れがあるとして警報が発表されました。

 地球と太陽の重力が釣り合う「ラグランジュ点」から太陽を観測している人工衛星SOHO(Solar and Heliospheric Observatory)がこの様子を撮影しました。上の画像はそのうちでも強力だった7月14日のCMEの直後の画像で、太陽から吹きつけられてきた無数の粒子がカメラを今にも襲おうとしている様子が映し出されています。

 左の画像は、EIT(Extreme-ultraviolet Imaging Telescope)による極紫外線の鉄の輝線(195Å)による画像・まん中は太陽周辺部の広い範囲のコロナの様子を撮影するために取りつけられたLASCO(Large Angle and Spectrometric Coronagraph)の中心画像・右はそのさらに広い範囲を撮影した物です。

6月6日 LASCO/C2によるCME画像
(背景に移動していく金星の姿も見られます)

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6月6日 LASCO/C3によるCME画像

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7月14日 EITによる中心部拡大画像

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7月14日 LASCO/C3によるCME画像

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X線観測衛星チャンドラが撮影した「アンテナ銀河」NGC4038 4039

 NGC4038と4039は、からす座にある銀河で、明るさはそれぞれ11.3等・13.0等、距離は60億光年の距離にあります。私たちが普通の望遠鏡でこの銀河を撮影すると、下の写真のように2つの大きなひげのようなものが延びており、この形から「アンテナ銀河」と呼ばれています。

 これは2つの銀河が衝突している様子を見ているところで、内部からは強力なX線が発せられています。そのX線を、X線観測衛星チャンドラが観測した画像が下の画像です。

 銀河どうしが衝突することで、銀河の中は物質のるつぼと化し、たくさんの物質がぶつかり合い超高温状態になると考えられています。それにより、銀河の中には大量の「超新星」が発生し、その超新星から発せられた星間ガスが、やがて新しい星を作りだし、1つの新しい銀河ができると考えられています。

 X線による観測は、星の一生を知る上で重要な観測で、私たちの天の川銀河の星たちの中にも、X線を発している天体がたくさんあります。たとえば、ブラックホールがあると考えられているはくちょう座X-1をはじめとして、星が生まれ、そして死んで行く場面では必ず強力なX線が発せられています。

 チャンドラは、この8月で観測をはじめてからちょうど1年になります。これからもたくさんの宇宙の謎を解き明かしていくことでしょう。

Chandra HomePage
http://chandra.nasa.gov/


Deep Space-1  宇宙を行く

 1998年10月に打ち上げられ、宇宙での最新の推進エンジンであるイオンエンジンや小惑星によるスウィングバイなど数々のテストを宇宙空間で行っている宇宙船ディープスペース1は、NASAの新世紀プログラムのひとつとして2001年に向けて宇宙空間を飛び続けています。

 Deep Space-1の最大の特徴は、その推進力の源であるイオンエンジンにあります。液体化されたキセノンを搭載し、イオン化して噴出することにより宇宙空間での推進力を得るもので、これまでの燃焼型エンジンのように大きく重い固体燃料を使用することがないことや、推進力の調整が容易なことから、方向転換も自在にできるなど、正に次世代の宇宙エンジンとして注目されています。


Deep Space-1
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イオンエンジンのテスト噴射
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 イオンエンジンは、その原理そのものは決して新しいものではなく、地球を周回する人工衛星などの軌道修正用としてすでに実用化されています。しかし、その力はごくわずかなもので、宇宙空間での高速移動用の大出力エンジンとしてはDeep Space-1が初めての試みになります。

 Deep Space-1に搭載されているイオンエンジンは、一日連続使用してもわずか100gのキセノンしか使用しません。そのため、搭載重量の限られる宇宙船には最適で、Deep Space-1では14,000時間(約583日)分の使用が可能です。現在の計画では、来年秋に接近するのボレリー彗星(19P)までの観測計画が予定されています。

Deep Space-1 HomePage
http://nmp.jpl.nasa.gov/ds1/


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