8月12日(月)夕方 スピカが月に隠される

 8月12日(月)の夕方、おとめ座の一等星スピカが月に隠される「星食」という現象が見られます。日本で夜間に見られる一等星の食は、2005年3月31日のアンタレス食以来、8年ぶりとなります。

●星食とは?

 星食のお話をする前に、天文現象で言う「食」についてお話しておきましょう。文字通り、天体が「食べられる」現象のことをいいます。もちろん、誰かが星をパクパク食べてしまうわけではないので、何らかの自然現象が起きるわけです。

 有名なところでは、「日食」と「月食」があります。日食は、地球からの見かけ上太陽の前に月が入り込んでくることによって、太陽が月に直接隠される現象です。太陽と月と地球上での見る場所の位置関係により、太陽全体が隠されるものを皆既日食・見かけ上太陽の中に月がすっぽり収まってしまい、リング状に太陽の光が見える金環日食・太陽の一部だけが月に隠される部分日食の3種類があり、2012年5月21日には、本州で見られるものとしては129年ぶりとなる金環日食がありました。

 一方「月食」は、太陽の光によって照らされている月が、地球の影の中に入ることによって見えなくなる現象です。日食とは違って、直接月を何かの天体が隠しているわけではありません。しかし、ちょっと視点を変えると、月から見たときに、太陽が地球によって遮られている状態、つまり月での日食が起こっていると考えられるわけです。最近日本で見られた月食は、2011年12月10日に日本全国で皆既月食が見られました。

 これらの「食」は、宇宙空間での天体の位置関係が相互に直線上に並ぶことによって、より遠方にある天体が隠されることを差しています。日食の場合は、太陽・月・地球の順に並んだ時に起こり、月食の場合は、太陽・地球・月の順に直線に並んだときに起こることになります。

 なぜ、このように天体と天体が一直線上に並び、日食や月食が起こるのでしょうか?。その理由は月の公転が大きく関係します。月は地球のまわりを約一カ月かけて一周しています。それは地球上から見ると、天球上を少しずつ移動しているように見えることになります。ですから、その日・その時間で月の見える場所は少しずつ違っているわけです。

 その天球上を移動している月が、私たちからの見かけ上恒星の手前を通過するときに星食が起こります。今回のスピカ食では、スピカ・月・地球が一直線上に並び、見かけ上スピカの手前に月が入り込んでくることにより、月がスピカを隠す現象です。

●今回の星食について

 今回のスピカ食は、8月12日(月)の夕方の太陽が沈むころ、南西の空の中ほどにある月が、スピカを隠します。後述の北限界線が通る秋田〜岩手以北を除く、全国で見ることができます

 また、関東・甲信越よりも西の地方では、太陽が沈む前にスピカが月に隠されます。昼間の空では星は見えないと思いがちですが、スピカは十分な明るさがあるので、夕方の空の中でも望遠鏡を使えば見えるはずです。月の太陽に照らされていない側(暗縁)付近を、少し倍率を上げて注意深く見てみると、スピカを見つけられるはずです。昼間の青空の中で星を見る良い機会でもあるので、是非チャレンジしてみてください。

 星食の観察は、その星の明るさと月齢、そして月の高度が関係し、これらの条件が整う機会は少ないのですが、今回は条件が良く整っており、空の明るい都会でも、小型の望遠鏡や双眼鏡で十分に楽しむことができるでしょう。


今回のスピカ食
東京付近での様子のシミュレーション

2013年8月12日のスピカ食の時刻(日本時間)

地名

月の暗縁に隠される

月の明縁から出てくる

日没

札幌

月に隠されない 18:57最接近

18:36

仙台

18:54

19:14

18:35

東京

18:46

19:25

18:37

大阪

18:40

19:23

18:51

福岡

18:28

19:21

19:09

鹿児島

18:27

19:27

19:06

那覇

18:22

19:37

19:09
明縁とは、月の太陽に照らされている(光っている)側の縁のことをいい、暗縁とは、月の太陽に照らされていない(光っていない)側の縁のことをいいます。暗縁に潜入する瞬間ははっきりと見ることができますが、明縁から出現する瞬間は月が明るいため見つけにくいです。

●秋田〜岩手では接食となる

 星食は、日食と同じように見る場所によって見え方が違うという特徴があります。今回の星食では、概ね北に行くほど月の縁近くを通過していきますが、北限界線が通る秋田県由利本荘市と岩手県釜石市を結ぶ線上の地域で「接食」として見ることができます。また、この北限界線以北の地域では、スピカは月に隠されません。

 接食とは、月がその向こう側にある星をかすめるように移動していく現象で、月の縁にあるクレーターなどの凹凸に星が隠されるため、時には星が何回も点滅して見られることがあります。1994年11月30日のスピカ食のときの様子がこちらのページにあります。古い画像のため画質はよくありませんが、この時は3分18秒の間に8回の点滅を見ることができました。今回のスピカ食でもこのような様子を見ることができるかもしれません!。

 接食が見られる地域は、月に隠されるか隠されないかの境界線を地上に引いた「限界線」と呼ばれる線上のごく限られた地域だけで、わずか数十メートル離れただけでも見え方が変わります。右のGoogle Mapは、今回のスピカ食の北限界線を地図上に表示したものです。お近くにお住まいの方は、是非限界線近くに行って観察してみてください。GPSを搭載したスマートフォンなどから、現在地と限界線を確認できるGoogle mapも、こちらに用意しています。

●どこで、どうやって見える?

 今回の食は、南西の高度20〜30度程度の空で起こりますから、月が見える場所であればどこでも観測できます。都会の住宅地などでは、西に開けたベランダなどで充分見ることができる現象です。

 通常、星食は月と隠される星の明るさの差が大きいため、肉眼では見ることができませんが、今回は隠される星が1等星と明るく、月も比較的細いため、出現してから30分後くらいには、肉眼でも見ることができるでしょう。しかし、潜入時はまだ空が明るいため、肉眼ではスピカを確認できないかもしれません。望遠鏡や双眼鏡があったほうが、より確実に見ることができるでしょう。

 上記の潜入時刻を参考に、その30分くらい前から月を望遠鏡の視野に入れ、その近くにあるスピカをあらかじめ見つけておきます。時間が経つと星は少しずつ月に近づき、月の縁にふっと消える様子が見られるはずです。月がまぶしくて星が見えにくいときは、ちょっと高めの倍率にして月の一部が見えるくらいにすると、月の裏側に入リ込む様子もじっくり見ることができるはずです。

 さらに、上記の出現の時刻になると、今度は星が月の裏側から出てくる現象が見られます。星がどこから出てくるかを特定するのは難しく、また今回は月の明るい側から出現するため、出現の瞬間を捉えるのは難しいかもしれませんが、予告も無く突然星が現れる様子をしっかりと見ておきましょう。出現から2〜5分くらいたてば、月の縁からスピカが現れたのをはっきりと見ることができるはずです。

●8年ぶりの一等星の星食 次回は2年後!

 今回の星食は、いままでにも書いてきたように日本で夜間に見られた一等星の星食としては8年ぶりとなります。全天には21の一等星がありますが、このうち月に隠される可能性があるのは、今回のおとめ座のスピカの他に、おうし座のアルデバランしし座のレグルスさそり座のアンタレスの4つしかありません。星食は月によってそのはるか向こうにある星が隠される現象ですから、天球上で月が地球からの見かけ上通る道(白道といいます)の近くにある星しか隠されないのです。

天球上での月の通り道(白道)が毎年変わる様子
クリックすると拡大します
1年分の月の通り道の移り変わりがと、
4つの一等星がどの時期に月に隠されるかがわかります

 しかし、実際には天球上の月の通り道は毎回少しずつ変わっています。これは、月が地球のまわりをまわっている軌道面が、地球が太陽のまわりをまわっている軌道面(黄道面・・・黄道=天球上で太陽が地球からの見かけ上通る道)に対して約5゜傾いていて、その傾く方角が約18年周期で変わるために起こります。このため、月に隠される星はいつも同じ星ではなく、ある期間に限って隠される現象が見られることになります。

 さらに、月は地球から最も近い「星」で、地球上の見る場所によっても天球上での位置が変わります。今回のスピカ食でも、上記の限界線より北の地域ではスピカは隠されません。また、昼間の月が起こす星食は観測しにくいため、一等星の星食を夜の空で良い条件で見られることは、非常にめずらしいことなのです。

月の軌道面の傾きが変わる様子
この傾きの周期が約18.2年

 今回のスピカ食の次に日本で夜に良い条件で見られる一等星の食は、2015年10月2日に東日本を中心に見られアルデバラン食までありません。

 星食をはじめとした「食」は、とてもライヴ感覚のある天文現象なので、一度見てみるととても感動するものです。当社の毎月の星空案内のコーナーでは、スピカ食はもちろん、星空を気軽に楽しむことができる双眼鏡や望遠鏡を用意しています。この機会に是非お求めいただき、ご自身の目で宇宙の星々が繰り広げるショーをお楽しみください。

商品は十分在庫をご用意しておりますが、現象の日時が近づくと、注文が殺到し品切れになることもあります。ご注文はお早めにお願い致します。

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