シュワスマン・ワハマン第3彗星(73P)はB核に注目!


1995年の回帰時に撮影したシュワスマン・ワハマン第3彗星
右下の天体はへびつかい座の球状星団M62
1995年10月21日 19時32分44秒
Meade LX200-25(F6.3)+レデューサー
カメラ:SBIG ST-6 露出5秒
撮影地:長野県野辺山高原

 5.3年の周期で太陽のまわりを回っているシュワスマン・ワハマン第3彗星が、現在6〜7等と明るくなっています。

 シュワスマン・ワハマン第3彗星は、1930年5月2日にドイツのハンブルク大学付属天文台のアルノルド・シュワスマン(Arnold Schwassmann)とその助手のアルノ・ワハマン(Arno Wachmann)が、火星と木星のあいだにある小惑星の探索中に、偶然発見した彗星です。この時の彗星の明るさは6〜7等で、その年の5月31日には地球に0.0616AUまで接近しました。その時の観測から、この彗星は5.43〜5.46年程度の周期彗星で、木星軌道付近と太陽の反対側の地球軌道付近を楕円軌道で公転していることがわかりました。
 しかし、その後は地球との位置関係が悪く、彗星の回帰時に観測されることはありませんでした。それほど、この彗星は大きくはなかったのです。この彗星が再び観測されたのは、約50年後の1979年の8月13日。オーストラリアのパース天文台のJ.ジョンストン(Johnston)とM.バーギアー(Buhagiar)が、やはり小惑星の探査中にこの彗星の回帰を偶然発見しました。この時は最も地球に接近したときで1.4359AU・明るさは12.5等でした。このときの観測から、見つからなかった約50年間を軌道が計算した結果、1953年と1965年に木星に大接近し、彗星の軌道が大きく変わっていたことがわかりました。
 1979年の次の回帰となる1985年には地球との位置関係が悪く観測されませんでしたが、1990年には9等で観測され、その次の1995年の回帰には8月19日に12.9等で観測された後、たびたび不規則な増光が観測されました。上の画像はその中でも最も明るくなった10月21日の大増光の時の様子です。この増光後、この現象が彗星が爆発して分裂したことにより起こったことが判明したのは12月23日。その後本体から次々と分離した彗星の姿が観測されました。前回2001年の回帰では、このとき分裂した彗星のうち大きなB核とC核が観測されました。

 今回、この彗星は5月14日に0.0669AU(B核)まで接近します。その距離は1930年の発見時よりは少し遠いものの、天文学的には「ニアミス」に近い接近です。このため、発見時と同じくらいの明るさで見えるのではないかと期待されています。

 4月18日に、ハッブル宇宙望遠鏡によりこの彗星のB核とG核が撮影されました。この画像では、この2つの核が太陽からの放射と潮汐力により次々とバラバラに分解されている様子がわかります。

●HubbleSite - Hubble Provides Spectacular Detail of a Comet's Breakup - 4/27/2006
http://hubblesite.org/newscenter/newsdesk/archive/releases/2006/18/

 また、この様子は地上の望遠鏡からも観測されています。

●アメリカアリゾナ大 グラハム山天文台ヴァチカン1.8m望遠鏡による彗星
http://www.lpl.arizona.edu/~chergen/73P.html
(これまでの変化が見ることができ、随時新しい画像も更新されています)

●アメリカイリノイ州 イグルー天文台16cm反射望遠鏡によるDennis Persyk氏撮影の彗星B核
http://home.att.net/~dpersyk/new.htm

 このような彗星が分裂した様子は、彗星が暗く小さいため眼視では見ることができず、今のところ写真でしか見ることができません。しかし現在分裂中のB核や、以前からの彗星の主体であるC核の全体像は、双眼鏡や小望遠鏡でを使えば十分見える明るさです。特にB核は現在分裂を繰り返しており、当初の予想より1〜2等明るく観測されています。これからさらに明るくなる可能性もありますので、下記のファインディングチャートを参考に、探してみてください。

(5月2日 13:20)


 現在、彗星のC核がこと座のリング状星雲M57の見かけ上すぐ近くを移動しています。日本からは残念ながらその様子を見ることができないのですが、現在夜を迎えているヨーロッパやアメリカからはその様子を見ることができます。

 イタリアのローマに近いラツィオ州チェッカーノにあるベラトリクス天文台のジャンルカ・マシ(Gianluca Masi)氏が、つい先ほど撮影した画像を以下のページで公開しています。

●ベラトリクス天文台
http://www.bellatrixobservatory.org/ 彗星とM57の画像はこちら(画像リンク承諾済み)

(5月8日 11:50)



 NASAのジェット推進研究所とカリフォルニア工科大学が2003年に打ち上げた赤外線宇宙望遠鏡スピッツァーが、分離したシュワスマン・ワハマン第3彗星を丸一日かけて撮影した画像が公開されました。高解像度画像では、彗星のダストトレイルに沿っていくつにも分解した彗星が数珠つなぎになっている様子を、鮮明な画像でみることができます。

●Spitzer Space Telescope "A Million Comet Pieces"
http://www.spitzer.caltech.edu/Media/releases/ssc2006-13/ssc2006-13a.shtml
 高解像度画像(3.1MB)はこちら

(5月11日 21:40)



5月3日(4日未明)の
シュワスマン・ワハマン第3彗星(73P)B核とC核
富士山須走口五合目にて撮影
デジカメ一眼レフ+85mmF2→F2.8 2分露出
Meade LXD75赤道儀に同架


5月3日(4日未明)の
シュワスマン・ワハマン第3彗星(73P)B核とM13
富士山須走口五合目にて撮影
デジカメ一眼レフ+300mmF4 2分露出
Meade LXD75赤道儀に同架

●5月3日の写真(上の2枚)について
 全国的に晴天となったゴールデンウイーク後半初日、富士山須走口五合目に彗星を見に行ってきました。高いところに春がすみが残る空でしたが、月が沈んだ夜半ごろからは夏の天の川が強いコントラストではっきり見え、
Meade LX90-30で彗星をはじめいろいろな星雲星団を見て楽しみました。特に大口径で見るM13などの球状星団は大迫力です!。
 彗星の方は、C核とB核は
8×42双眼鏡でもはっきり確認でき、短く尾を伸ばしている様子は9×63のほうがより楽しめる。ただ、彗星本体が拡散状なので、倍率が低い7×50がいちばん明るく感じました。他に20×88大型双眼鏡やLX90-30でもそれぞれの核を見てみましたが、口径が大きければ倍率を上げてもそれなりに楽しめる対象でした
 M13とB核を一緒に撮影した右の写真は、ピントが追い込めていないので大きな画像は公開できません(笑)。

■彗星のみつけかた

●5月11日〜5月17日の明け方3時ごろの東の空


カラー版


プリントアウト用

 このファインディングチャートは東京での明け方3時ごろの東の空高くの図です。大阪では約20分後・福岡では約40分後がほぼ同じ空になります。左に日付のある水色の●がB核・C核のそれぞれの彗星の位置を示します。

 現在彗星は地球に急接近中で、B核・C核ともに6〜7等級で観測されています。肉眼で見ることは難しいですが、双眼鏡や望遠鏡を使って上記のチャートを参考に周囲の明るい星からたどれば、十分見つけられる明るさです。また、この期間は満月前後の月があるため、なるべく月が低くなる遅い時間に見つけると、淡い彗星を簡単に見つけることができるでしょう。

 この期間中は、こと座からペガスス座に向けて東に移動しています。現在最も地球に近いているため、毎日の移動速度が非常に早く、30分程度の間でも彗星が移動しているのが確認できるはずです。

 彗星を見つけるときは、7倍50mm9倍63mmの双眼鏡など、なるべく視野の広く(倍率の低く)口径の大きな双眼鏡や、2インチ広視界アイピース焦点距離の長いアイピースを使って倍率を低くした望遠鏡で探してください。望遠鏡の場合は、彗星はファインダーでも十分見つけられる明るさですから、チャートを参考にその周囲を探してみてください。

B核の彗星の座標(日本時間3時の位置)
日付 赤経(R.A.) 赤緯(Dec.)
5/11 19h06m.4 +40゜09'
5/12 19h38m.9 +39゜02'
5/13 20h12m.3 +37゜16'
5/14 20h45m.5 +34゜47'
5/15 21h16m.9 +31゜45'
5/16 21h45m.9 +28゜18'
5/17 22h11m.8 +24゜41'

C核の彗星の座標(日本時間3時の位置)
日付 赤経(R.A.) 赤緯(Dec.)
5/11 20h02m.4 +30゜03'
5/12 20h29m.5 +28゜05'
5/13 20h55m.9 +25゜48'
5/14 21h21m.1 +23゜14'
5/15 21h44m.6 +20゜32'
5/16 22h06m.1 +17゜46'
5/17 22h25m.7 +15゜04'

 天体自動導入望遠鏡をお使いの方は、上の表から、各日付の座標を入力してください。より早い時間に観測する場合は、少し西の空(高い方)を探した方が良いでしょう。 

●Meade オートスターの場合
テンタイ→ユーザーテンタイ→ツイカで右の座標を入力してから、その追加したデータを「センタク」して自動導入
※#497オートスターVer.2.3以前および#494オートスターVer.1.1以前のモデルでは、タイヨウケイ→スイセイ(コメット)で軌道要素を入力する方法では、正確な位置を計算できません。上の方法でその日ごとに入力してください。


73P/Schwassmann-Wachmann-3 彗星 B核 軌道要素

元期       = 2006/05/25.0(TT) = JDT 2453880.5
近日点通過 = 2006/06/07.92466 (TT)
近日点距離 = 0.9390718 AU
近日点引数 =  198.80779
昇交点黄経 =   69.88766 (2000.0)
軌道傾斜角 =   11.39726
離心率     = 0.6933193

73P/Schwassmann-Wachmann-3 彗星 C核 軌道要素

元期       = 2006/05/25.0(TT) = JDT 2453880.5
近日点通過 = 2006/06/06.95722 (TT)
近日点距離 = 0.9391224 AU
近日点引数 =  198.81074
昇交点黄経 =   69.89188 (2000.0)
軌道傾斜角 =   11.39572
離心率     = 0.6932028


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