当社双眼鏡企画シリーズとして、昨年リリースしたFZ-RFシリーズは、多くのお客様にお求めいただき大変好評をいただきましたが、お求めいただいた双眼鏡をよくご存知のマニアの方から、「月を見たときにハレーションやゴーストが目立つ」というご指摘をいただきました。N社やF社等の高価な双眼鏡ではこのような現象は見られないので、なんとかならないのかというご意見でした。
　この点はFZ-RFシリーズの開発過程でも把握していた事案でしたが、暗夜の満月近くの明るい月でのみ気になるレベルであったため、価格を抑えるために内面反射についてはある程度妥協をしていた部分でした。
　しかし、このご指摘をうけ、なんとかゴーストの無いものを作ることができないか検討することになりました。FZ-RFシリーズがコスト重視でバランスを取った製品になったのに対し、こんどは性能重視でバランスを取った製品を開発してみたらどうだろう・・・。
　そこで、ハイコントラスト・ハイブライトネスをテーマにしたマニア向け双眼鏡として今回リリースするのが、FZ-750GFSです。マニアの方々が欲するような一流双眼鏡と同様のクォリティーを、より安価に実現できないか。中国のメーカーと共同で開発した商品です。

　FZ-RFシリーズでは、「直感的に見える」をテーマに設計を行ったため、あえて倍率を1ランク上げて10倍としたわけですが、FZ-750GFSでは、「ハイブライトネス」を実現するために、最も網膜に多くの光が入射する射出瞳径7mmとなる7倍50mmの仕様としました。真っ暗な離島の海辺や高い山の上に行って、天の川の星雲星団のきらめきやアンドロメダ銀河の広がりを感じるのに最適なスペックで、まさにマニア仕様の双眼鏡と言えるでしょう。

●こだわりのコーティングと内面反射防止

　7倍50mmの明るさを最大限に網膜に届け、なおかつ内部反射などによるコントラストの低下を避けるため、全レンズとプリズムに可視光全域にフラットな特性をもつマルチコートを施しています。プリズムの硝材はもちろんBak4を使用しています。
　反射防止コーティングは多く施せば良いというものではなく、その膜厚が大きくなると、回折を起こして像が劣化します。しかし、膜厚を薄くするために蒸着時の温度を高くしすぎると、レンズやプリズムそのものの性能が損なわれてしまいます。そのため、蒸着温度を厳重に管理して、最高の品質のコーティングを実現しています。
　また、鏡胴内での反射を避けるため、内部には逆反射が起こらないような形状のバッフルを挿入しており、内部反射によるコントラスト低下を最小限に抑えています。

●ゴーストレス設計の接眼レンズ

　満月の時の月など、コントラストの高い対象を見たときに、最も像に大きな影響を及ぼすのはアイピース側のレンズです。コーティングをいくら良くしても、アイピース内で相互に表面反射を起こしてしまいます。
　FZ-750GFSでは、見かけ視界を欲張らず50度程度に抑える代わりに、アイピースの設計を大型化し、表面反射した光がどのように収束するかをシミュレーションして、その結果が最小値になるようにし、ハレーションやゴーストの少ないハイコントラストな像を実現しました。さらに、アイピースを大型化したため必然的にハイアイレリーフとなり、めがねをかけていても非常に見やすくなっています。
　また、天体観測での使用を前提に設計したため、ピントあわせはヘリコイドによる独立式としており、高い防水性能も確保しています。