1月18日(日)朝 さそり座δ星の掩蔽

 1月18日(日)の明け方の南東の空で、「掩蔽」(えんぺい)という現象が起こります。掩蔽とは、遠くにある物体がその向こう側にある物体を隠すことを差しますが、天文での掩蔽は、太陽系内の天体がその移動により見かけ上その天体より向こう側にある天体を隠してしまう現象です。別名「星食」とも呼ばれる現象で、この方が皆さんには耳なじみがあるかもしれません。

●掩蔽(星食)とは?

 星食のお話をする前に、天文現象で言う「食」についてお話しておきましょう。文字通り、天体が「食べられる」現象のことをいいます。もちろん、誰かが星をパクパク食べてしまうわけではないので、何らかの自然現象が起きるわけです。

 有名なところでは、「日食」「月食」があります。日食は、地球からの見かけ上太陽の方向に月が入り込んでくることによって、太陽が月に隠される現象ですね。月食は、太陽の光によって照らされている月が、地球の陰の中に入ることによって見えなくなる現象です。これらの「食」は、宇宙空間での位置関係が相互に直線上に並ぶことによって、遠方にある天体が隠されることを差しています。最近日本で見られた現象では、一昨年6月11日に部分日食が日本で見られました。

 一方「星食」は、日食と同じ仕組みで月がその向こう側にある星を隠す現象を言います。もっと広い意味では、月以外の太陽系の天体にも適応されます。ですから、惑星や小惑星などにより、それより遠くにある星を隠してしまう「掩蔽」もあるわけですね。最近起こった星食としては、昨年6月6日のしし座η星の掩蔽が、比較的見やすかった現象でした。

 月は地球のまわりを約一カ月かけて公転しています。それは地球上から見ると、天球上を少しずつ移動しているように見えることになります。ですから、その日・その時間で月の見える場所は少しずつ違っているわけです。

 天球上を移動している月と見かけ上同じ位置に他の星が重なる場合に、月による「星食」がおきます。月がその星の前を通過することにより、星が隠される現象です。月のどの場所に隠されるかにもよりますが、長くて1時間くらい隠れている時間があります。

●今回の星食について

 今回は、朝の太陽が昇る前の東の空で、下弦過ぎの月によってさそり座δ星(2等星)が隠されます。星食の観測にはその星の明るさと月齢、そして月の高度が関係するため、条件の良い時は少ないのですが、この星食は空の明るい都会でも楽しむことができ、小型の望遠鏡や双眼鏡でも見ることができる初心者の方にもわかりやすい天文現象です。

 星食は、見る場所によって見え方が違うという特徴があります。今回の星食では、概ね南に行くほど月の縁近くを通過していきます。北海道から鹿児島までの地方では、月に星が隠される様子を見ることができますが、沖縄では月がかすめていくだけで、星が隠される様子を見ることはできません。


今回のさそり座δ星の掩蔽
東京での様子のシミュレーション

2004年1月18日のさそり座δ星の掩蔽の時刻(日本時間)

地名

月の明縁に隠される

月の暗縁から出てくる

札幌

5:09

6:19

仙台

5:07

6:18

東京

5:06

6:16

大阪

5:04

6:08

福岡

5:04

5:58

鹿児島

5:07

5:56

那覇

隠されずに、近くを通過する 5:29最接近
明縁とは、月の太陽に照らされている(光っている)側の縁のことをいい、暗縁とは、月の太陽に照らされていない(光っていない)側の縁のことをいいます。明縁に星が潜入する瞬間は、月が明るいため見にくいですが、暗縁から出現する瞬間ははっきりと見ることができます。

●いま、変わりつつある星

 もうひとつ、今回の星食では注目すべき点があります。今回月に隠されるさそり座δ星は、2000年7月に突然それまでより明るく輝きだしたことで非常に注目されている星です。それまでは2.3等星と、2等星の中でも少し暗めの星だったのですが、現在は1.6〜2.0等のあいだを不規則に変光しながら輝いています。これは、この星が星の一生を終える前段階に入り、高速に回転しながら星の内部からガスを放出して降着円盤(こうちゃくえんばん)というものを形成している経過と考えられています。いままさに変化し続けている星といえるわけです。
 この星は550光年と非常に遠いところにあるため、その円盤の様子を地球から見ることはできません。通常、恒星の掩蔽は遠くにある限りなく点に近い星を隠すため、まさに「あっ」という間に星が隠されていまいます。しかし、今回のように現在変化を続けている恒星の場合は、何か違った現象が見られる可能性があるかも知れません。具体的には、出現の時に段階的に明るくなることなどが考えられます。

●どこで、どうやって見える?

 今回の食は、高度20度程度の下弦の月によって起こりますから、月が見える場所であればどこでも観測できます。都会の住宅地などでは、東に開けたベランダなどで充分見ることができる現象です。

 通常、星食の観測は、月と星の明るさの差が大きいため肉眼では見ることができません。今回は隠される星が2等と明るく、月も比較的細いため、小型の望遠鏡や双眼鏡で十分に観測できます。

 4:30ごろから月を視野に入れて、その近くにあるさそり座δ星をあらかじめ見つけておきます。時間が経つと星は少しずつ月に近づき、月に飲み込まれるようにふっと消える様子が見られるはずです。月がまぶしくて星が見えにくいときは、ちょっと高めの倍率にして月の一部が見えるくらいにすると、月の裏側に入リ込む様子もじっくり見ることができるはずです。


東京での午前5時ごろの南東の空の様子

 1時間ほど経つと、今度は星が月の裏側から出てくる現象が見られます。この頃の月は地球照(太陽に照らされた地球の光が反射して、月の太陽に照らされていない部分がうっすらと見える現象)が見られれますから、月の暗縁も確認できるはずです。予告も無く突然星が現れる様子をしっかりと見ておきましょうね。

 星食をはじめとした「食」は、とてもライヴ感覚のある天文現象なので、一度見てみるととても感動するものです。皆さんも是非ご自分の目で空の上で繰り広げられる天体ショーを確かめて見てください!。

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