今 輝きだした新しい星 M78星雲近くに
アメリカのアマチュア天文家が発見!

 今年1月23日に、オリオン座にある星雲M78をアメリカ ケンタッキー州Paducahのアマチュア天文家J. W. McNeil氏が撮影しました。口径76mmの屈折望遠鏡に取り付けた冷却CCDカメラにより撮影されたその画像の中から、これまで撮影された画像には写っていない星雲があることをMcNeil氏自身が発見しました。

 報告を受けたハワイ大学のB. Reipurth氏は、この天体を1月31日に同大学の2.2m望遠鏡で撮影しました。それによると、この位置には赤外線天体IRAS05436-0007があり、それが何らかの爆発現象(アウトバースト)を起こしているのではないかと考えられています。

2月11日に撮影されたIRAS05436-0007
北海道名寄市 
木原天文台 佐野 康男氏撮影 提供

左は2001年に撮影された同じ場所 右が今回の画像
左上の大きな星雲がM78星雲
今回の画像の右下にある黄色い線の左側にある雲状の天体が今回発見された星雲
左の画像には何も写っていないのがわかる。
この翌日以後の画像等、
こちらのページに掲載されています。

 この付近には暗黒星雲L1630があり、M78星雲もこの暗黒星雲が近くにある星に照らされて光っている反射星雲と考えられています。今回の現象は、この暗黒星雲の中にできつつある原始星で何らかの変化が起きて、可視光(私たちの目で見ることが出きる光)で輝きはじめたちょうどその瞬間と考えることができます。つまり、今、星が誕生しようとしている瞬間とも考えられる現象なのです。

 オリオン座には、これと同じような星として、1936年に出現したオリオン座FU星があります。この星も、暗黒星雲の中から突然輝きだした星として記録されていて、現在も10等〜17等の間を変光しながら輝き続けています。このように、オリオン座付近には星が輝き出す元となる分子雲と言われる領域が多数存在しています。有名なM42オリオン座大星雲もそのひとつですし、この付近を水素の出す輝線であるHα光で撮影すると、淡い星雲が大きく取り巻いている様子を見ることができます。この分子雲までの距離はおよそ1,300光年と考えられていて、今回の星雲の発光現象も、おそらく1,300年前ごろに輝き出した星の光が、ようやく私たちに届いたということになります。

オリオン座の星とM78星雲や他の星雲の位置
右の画像は水素の出す輝線Hαを中心とした光で撮影した写真を白黒反転にしたもの
この写真のように、オリオン座には分子雲が広がっています。

 この天体がこれからどのように変化していくかは、注意深く見て行く必要があります。分子雲のなかから星が誕生する瞬間を、はじめて私たちも見ることができるかも知れません!。残念ながら現在の明るさは小望遠鏡でそのまま目で見ることができる明るさではありませんが、今回の発見が口径76mmという小さな望遠鏡でなされた事実が示すとおり、冷却CCDなどを使えばアマチュアでも十分捉えることができる現象なのです。そして、アマチュアでも大発見ができる!。それが天文趣味の醍醐味のひとつでもあるのです。是非あなたもチャレンジしてみませんか?。

●ちょっと解説

◇IRAS Infrared Astronomical Satellite=赤外線天文衛星の略 オラン ダ・イギリス・アメリカの共同プロジェクト 衛星の製作はNASAが担当 1983年1月に打ち上げられ、素子の冷却剤が無くなる同年11月までの10カ月間稼働。57cm反射望遠鏡を搭載し、地上からは観測できない長波長の赤外線を観測 分子雲などの天の川銀河内の天体の他、彗星のダストトレイルの検出など、太陽系天体の観測でも大きな功績をあげる。
IRASによって発見された赤外線天体は、その性質により分類されIRASカタログとしてまとめられている。下のリンクよりそのデータは研究者に公開されている。
◇M78星雲 オリオン座にある星雲 「ウルトラマン」で有名な星雲ですが、実際には小望遠鏡で見るのは難しい暗い星雲。この「M」というアルファベットは、18世紀の彗星探索家シャルル・メシエが作った星雲星団のカタログ「メシエカタログ」の頭文字 小望遠鏡でも見やすい110個の天体が登録されている。メシエについてはこちらのページもご参照下さい。
◇暗黒星雲L1630 宇宙空間に存在する見えない物体「ダークマター」(Dark matter)が、密集して存在するところ。その向こう側にある星や星雲の光を遮ることにより、その存在がわかる。主に天の川銀河の中心近くに多いため、地球からは天の川に沿ってその領域が広がっている。地上からは観測できない赤外線を使うと、その存在が浮かび上がる物もある。
L1630の「L」は「リンズカタログ」の頭文字。アメリカのB.T.Lyndsが1962年に発表した暗黒星雲のカタログで、1902個の天体が登録されている。リンズカタログ以前に作られたものとして「バーナードカタログ」(B)もある。
◇反射星雲 上記の暗黒星雲のようなダークマターが、たまたま近くにある星に照らされて光っている星雲。M78はその代表例。これに対し、分子自体が何らかの原因で電離して光っている星雲のことを発光星雲という。この場合、その分子の構造により色が異なるが、反射星雲の場合は照らし出している星の光にも影響されるため、色は白いものが多い
◇可視光/赤外線 私たちの目で見ることができる光を可視光といいます。赤外線は人間の目では見ることができない光で、これを見るためには特殊なフィルムや素子で画像にする必要があります。また、地上では大気によって赤外線が遮られているため、宇宙からの赤外線は大半が吸収されてしまい見ることができません。このため、IRASのように宇宙に衛星を打ち上げる必要があったわけです。
ちなみに、水素の輝線であるHα光は可視光と赤外線のちょうど中間くらいの光ですが、実際には暗いため肉眼ではほとんど見ることはできません。

●参考リンク

International Astronomical Union Central Bureau for Astronomical Telegrams & Minor Planet Center
(国際天文連合 小惑星センター&天文電報中央局)  IAUC8284
http://cfa-www.harvard.edu/iauc/08200/08284.html

日本変光星観測者連盟(VSOLJ) VSOLJニュース No.121 (転載)
http://news.local-group.jp/vsolj_news/121.html

北海道名寄市 木原天文台
http://www.nayoro-star.jp/

赤外線天文衛星 IRAS
http://starchild.gsfc.nasa.gov/docs/StarChild/space_level2/iras.html

NASA LAMBDA IRASの観測データのArchive
http://lambda.gsfc.nasa.gov/product/iras/

National Optical Astronomy Observatory "McNeil's Nebula" ★必見★
アメリカ国立光学天体観測所 アリゾナ州キットピークにある50cmリッチークレチアン式望遠鏡による画像 画像をクリックすると、星雲の先端に輝きを増しつつある新しい星を見ることができます!
http://www.noao.edu/outreach/aop/observers/mcneil.html

簡単アンケートにご協力下さい
 このページの内容は おもしろかった ふつう おもしろくなかった
  ためになった ふつう ためにならなかった
  わかりやすかった ふつう わかりにくかった
 この星雲を 見てみたい思う わからない 見たくないと思う
 望遠鏡や双眼鏡を 望遠鏡を持っている 双眼鏡をもっている どちらも持っている
  どちらも持っていない    
 ひとことどうぞ

このボタンを押しても、あなたの個人情報などは送信されません




最近の天文現象・新天体情報等へ戻る