地球に衝突する可能性のある小惑星を未然に発見するために、夜空をくまなく撮影して探索しているアメリカ・リンカーン研究所の地球接近小惑星(LINEAR = Lincoln Laboratory Near-Earth Asteroid Research)プロジェクトチームは、1999年9月27日にぎょしゃ座を移動している17等の天体を発見しました この天体は、最初は小惑星として観測されていましたが、世界各地から追跡観測をした結果、彗星であることがわかり、IAU(国際天文連合)から、彗星として認識するための仮符号C/1999S4が付けられました。 |
彗星というと、1996年に地球に接近した百武彗星(C/1996B2)や、1997年のヘール・ポップ彗星など、美しい尾をたなびかせた姿を思い出しますね。はたして、今回のLINEAR彗星(C/1999S4)は、それほどの大きな彗星として私たちの前に姿を見せてくれるでしょうか?。 この彗星の軌道を見てみると、百武彗星(C/1996B2)に似ていることに気がつきます。百武彗星は、発見されたときすでに10等級で地球にかなり近づいた位置で発見されましたが、今回のLINEAR彗星(C/1999S4)はまだ3AU(天文単位)付近にいることになります。遠い分明るさも14等級と暗いわけですが、百武彗星が発見された約2AU付近のときのこの彗星の明るさは、現在のままを保てば百武彗星と同じ10等くらいで観測されるはずです。 百武彗星は、近日点通過の前に地球に約0.1AUまで接近しました。このときの彗星を見た方は、すばらしく細く長く延びた尾を見たことと思います。今回のLINEAR彗星はこれほどまでには接近しませんが、それでも約0.4AUまで接近することがわかっています。さらに、近日点(最も太陽に近づいたとき)の通過とも重なり、この頃最も長い尾をたなびかせると考えられます。 このときの地球と彗星の位置関係は、太陽からの距離が約0.7AU、地球から約0.4AUとなり、百武彗星の1996年4月上旬ごろの位置関係に非常に良く似ています。見える方角もほぼ同じです。あの百武彗星の感動をもういちど見ることができるとしたら、やはり期待せざるにはいられませんね!。 |
1996年4月6日の百武彗星(C/1996B2) 200mmF4にて撮影 撮影:編集部 S.Funamoto |
![]() ニィリョーラ(Nyrola)観測所で撮影された、2000年1月28日のLINEAR彗星(C/1994S4) 順調に彗星らしくなっているのがわかりますね。 撮影データ:2000年1月28日 18:56(UT) Meade LX200-40 + F6.3レデューサー SBIG ST-7E 冷却CCDカメラ + AO-7 2×2ビニング 5分露出×4枚コンポジット 撮影者:マルコ・モイラネン(Marko Moilanen)氏 アルト・オクサネン(Arto Oksanen)氏 |
LINEAR 彗星 (C/1999S4) 軌道要素 (放物線)
元期 = 2000/08/04.0 (TT) 近日点通過 = 2000/07/26.1666 (TT) 近日点距離 = 0.765036 AU 近日点引数 = 151.0657 昇交点黄経 = 83.1913 (2000.0) 軌道傾斜角 = 149.3908 (Calcurated S.Nakano from MPEC 37478)