6月8日(火)午後

130年ぶりの金星の日面通過

 日本では1874(明治7)年12月9日以来、130年ぶりとなる金星の日面通過が、6月8日(火)の午後に起こりました。残念ながら、北海道の一部を除いて全国的に雲に覆われ、雲間から見える太陽にうつった金星をなんとか見られた方もいらっしゃるでしょうか?。私も雲間から数回、みることができました。見た瞬間、金星の黒い丸を見て「でかっ!」と叫んでしまいました(笑)。残念ながら写真を撮るまでの余裕はありませんでしたが、今回の日面通過の全行程を見ることができたインドのアマチュア天文グループVENUS Transit Action Group (VENUSTAG)が運営するVenus Transit 2004 サイトでは、インド国内の3カ所で捕えられたリアルタイム中継の画像を見ることができます。市民も交えて楽しく観望している様子も含まれていますので、是非ごらんください。上記リンクの中にある「VT Live!」から見ることができます。

 次回の金星の日面通過は比較的早く、2012年6月6日に起こり、日本でも朝からお昼過ぎにかけて全過程を見ることができます。この年は、その直前の5月21日に関東を含む地域で金環日食も見られますから、大変楽しみな年になりそうですね!。


 金星の日面通過は、太陽・金星・地球が一直線上に並び、見かけ上太陽の手前に金星が入り込んでくることにより、太陽面に金星が黒く現れる現象です。位置関係としては、金星の代わりに月が入り込む日食と同じですが、月は地球のまわりを約1カ月かかってまわっているのに対して、金星は地球と一緒に太陽のまわりをまわっていて、約19カ月ごとに地球の内側を通過していきますから、起こる確立は日食に対して単純計算で約1/19となる、たいへんめずらしい天文現象です。

 昨年5月7日には、金星のさらに内側をまわる水星が同様に太陽面を通過しいく水星の日面通過も見られました。その様子はこちらのページで紹介しています。


今回の金星の日面通過が起こるしくみ
茶・紫・緑・赤の線はそれぞれ水星・金星・地球・火星の軌道
太陽と各惑星の大きさは解りやすいように大きくしてあります
日面通過は、地球の軌道面と内惑星の軌道面が交差する昇交点・降交点付近で起こります
水星は5月9日前後と11月11日前後 金星は6月8日前後と12月10日前後

●ちょっと横道・・・地球を知るには宇宙を見よ。文明開化と天文現象の意外な関係

 明治初期、長らく鎖国を続けてきた日本にも、海外からいろいろな文明や文化がもたらされはじめました。明治5年にはそれまで使用されてきた暦(こよみ)が、太陰暦から太陽暦に変わったことなど、天文の分野でも大きな変化があったころです。

 明治7年、海外から見ればまさに「期待のニッポン」で金星の日面通過が起こるということで、当時外国人の多く居留していた横浜・神戸・長崎に、海外から観測隊が日本にやってきました。当時、日本でも天体観測を行っていた人はいましたが、西洋式による天体観測は行われておらず、この観測は日本の天文史上に残る歴史的な天体観測となったといえます。この観測により、島国だった日本の地球上での位置が、より正確に測定されたことは非常に重要な出来事です。これを記念して、それぞれの観測地点には記念碑などが建てられています。お近くの方は、以下のページを参考に是非足を運ばれてはいかがでしょうか。

 ★横浜市紅葉ヶ丘 金星太陽面経過観測記念碑(横浜市西区HomePageより)
 ★神戸市諏訪山公園 金星台 ビーナスブリッジ 金星観測記念碑(神戸市HomePageより)
 ★長崎市金比羅山 長崎市科学館スターシップのHomePageに紹介されています


今回の金星の日面通過の東京での様子
画像の上が天頂になります
日本では、時刻は1分前後の差はありますが
どこでもほぼ同じに見えます

●今回はどう見えるの?

 今回の金星の日面通過は、6月8日の午後2時過ぎ、太陽が少し西に傾いたころから起こります。金星の日面通過は日食に比べてずっと遠いところで起こっている現象ですので、日食のように地球上の場所による見えかたの差はほとんどありません。今回の日面通過の時間は下の表の通りです。

 また、今回は比較的太陽の中心に近いところに入る現象のため、太陽面を通過している時間も長く、日本では日面通過の途中で日没となってしまいます。ですから、観測場所はなるべく西の空の開けた場所を選ぶとよいでしょう。

 日没の時刻はこの時期は東京など関東地方が最も早く、西に行くほど遅くまで日面通過の様子をみることができます。

 金星の日面通過では、太陽面にある黒点白班など、太陽の模様の中を金星がゆっくりと動いていく様子を観察することができます。一見、太陽面を通過している金星は黒点と見間違えてしまいますが、良く見てみると輪郭がはっきりした「丸」として見えるため、黒点とは明らかに違うことがわかります。

 左の図はその様子をシミュレーションしたものです。金星の直径は12100km地球とほぼ同じ大きさですから、太陽がいかに大きな天体であるかがわかります。是非実際に目でみて確かめてみてください。

2004年6月8日の金星の日面通過の主な現象の時刻(日本時間)

地名

太陽面に一部が入る

太陽面に全部が入る

太陽面の一番内側を通過

日没

札幌

14:11:55ごろ

14:31:10ごろ

17:14:10ごろ

19:10

仙台

14:11:30ごろ

14:30:35ごろ

17:13:55ごろ

18:58

東京

14:11:15ごろ

14:30:25ごろ

17:13:45ごろ

18:53

大阪

14:11:30ごろ

14:30:35ごろ

17:13:55ごろ

19:10

福岡

14:11:50ごろ

14:30:50ごろ

17:14:00ごろ

19:25

鹿児島

14:11:45ごろ

14:30:30ごろ

17:14:00ごろ

19:22

那覇

14:11:25ごろ

14:30:15ごろ

17:13:55ごろ

19:20

●金星の日面通過を安全に楽しむには・・・

 太陽はとても明るくまぶしいため、肉眼でそのまま見ることは大変危険です。まして望遠鏡を使って直接のぞくのはもってのほかです。望遠鏡で直接太陽を見ることは、失明の危険もありますので絶対にしないでください。

 しかし、金星の日面通過の観測は、太陽を適切な方法で減光してみることにより、肉眼でもなんとか見える程度の大きさの黒点としてみることができます。また、双眼鏡や望遠鏡を使って倍率を上げて見ることにより、よりはっきりと捕えるとができます。そのためには、明るい太陽の光をフィルターなどで減光する必要があります。天体望遠鏡では、口径6cm以上の望遠鏡で、だいたい50倍〜100倍程度の倍率にするとちょうど良いでしょう。

 当社オンラインショッピングでは、太陽観測用のフィルターを用意しています。このページで紹介しているフィルターは全て金星の日面通過の観測にそのままご使用いただけます。この機会に是非お求めください。

商品は十分在庫をご用意しておりますが、現象の日時が近づくと、注文が殺到し品切れになることもあります。ご注文はお早めにお願い致します。


バーダープラネタリウム製アストロソーラーフィルターを
直接取りつけたビデオカメラとその画像
望遠鏡に取りつけた場合もほぼ同じように見えます

 また、これらのフィルターを使えば、カメラやデジカメ・ビデオカメラでの撮影も楽しめます。時間とともに変化して行く様子をデジカメやビデオカメラで連続撮影すれば、動画として楽しむこともできます。

 もちろん、望遠鏡にカメラやデジカメ・ビデオカメラなどを取りつけて撮影することもできます。月や惑星を撮影するときに使用しているカメラアダプタ等がそのまま使用できますから、この機会に是非チャレンジしてみてはいかがでしょう。


天体望遠鏡用サングラスで見た太陽

 このように、望遠鏡に安全なフィルターなどを取りつけて太陽観測を行うことは、決してむずかしいことではありません。是非この機会に太陽観測にもチャレンジしてみてはいかがでしょう。使用方法に十分注意して安全に観測をお楽しみください。

●Meade オートスターを使用するときのTips

 天体自動導入望遠鏡は、夜に星が見える状態でアライメントを行う必要がありますが、この金星の日面通過のような昼間の天文現象では、アライメントを行うことはできません。
 Meade オートスター(オートスター2も含む)を搭載した望遠鏡の場合は、以下の方法を使えば太陽を自動追尾することができます。但し正確な自動導入と追尾はできませんので、視野を見ながら適宜コントローラーを使って視野の中央に調節して使用してください。

1.望遠鏡に太陽観測フィルターを取りつける(必ず最初に行ってください)
2.望遠鏡をなるべく水平にセットする。水準器などがあればBest
3.方位磁針などを使ってなるべく正確に北の方角に向ける
4.電源を入れ、観測地・時刻を設定する。
5.「アライメント」で(アライメントをせずに)「MODE」キーを押してメニューに戻り、「テンタイ」→「タイヨウケイ」→「キンセイ(ワクセイ)」を選択して「GOTO」ボタンを押す。
6.望遠鏡が太陽の近くまで向くので、視野の中に太陽を導入する。このとき、若干北(東)よりにずれているはずですので、(コントローラーを使わず)クランプを緩めて太陽の方に向けてください。これでだいたいの追尾ができるようになります。

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