3月30日(水)深夜(31日未明) アンタレスの掩蔽

●当日の様子

 関東では大変よい天気に恵まれ、潜入から出現までその様子を見ることができました。
 下の画像は当社ベランダにてデジタルビデオカメラ撮影した画像です。左が潜入直前、右が出現直後の様子です。

 左の画像をクリックすると、現象のダイジェスト版MPEGムービー(3.5MB)を見ることができます。高解像度のムービー(14MB)も用意しています。おまけとして、当日撮影した木星の映像も入っています。

 撮影機材は、当社オンラインショッピングで最も安価な入門機として販売しているMeade 114EQを使用しました。ベランダに適当に北の方角に向けて極軸をセットし、標準付属のモータードライブで恒星時追尾して撮影しました。左の写真がその撮影風景です。狭いベランダですので三脚を広げるとギリギリでしたが、いい加減な極軸セッティングでも必要十分な追尾精度を実現しています。

 この価格帯の機種としては非常に高いパフォーマンスの望遠鏡です。この程度の画像は撮れるという見本としてご覧いただければ幸いです。

■撮影機材

使用望遠鏡 : Meade 114EQ
デジタルビデオカメラ : Canon FV-M10
アイピース : MA25mm (望遠鏡に標準付属)
カメラと望遠鏡の接続はMeade デジカメアダプタ2を使用


 3月30日(水)深夜(31日未明)の南東の空で、「掩蔽」(えんぺい)という現象が起こります。掩蔽とは、遠くにある物体がその向こう側にある物体を隠すことを差しますが、天文での掩蔽は、太陽系内の天体がその移動により見かけ上その天体より向こう側にある天体を隠してしまう現象です。別名「星食」とも呼ばれる現象で、この方が皆さんには耳なじみがあるかもしれません。

●掩蔽(星食)とは?

 星食のお話をする前に、天文現象で言う「食」についてお話しておきましょう。文字通り、天体が「食べられる」現象のことをいいます。もちろん、誰かが星をパクパク食べてしまうわけではないので、何らかの自然現象が起きるわけです。

 有名なところでは、「日食」「月食」があります。日食は、地球からの見かけ上太陽の方向に月が入り込んでくることによって、太陽が月に隠される現象ですね。月食は、太陽の光によって照らされている月が、地球の陰の中に入ることによって見えなくなる現象です。これらの「食」は、宇宙空間での位置関係が相互に直線上に並ぶことによって、遠方にある天体が隠されることを差しています。最近日本で見られた現象では、昨年10月14日に部分日食が見られました。

 一方「星食」は、日食と同じ仕組みで月がその向こう側にある星を隠す現象を言います。もっと広い意味では、月以外の太陽系の天体にも適応されます。ですから、惑星や小惑星などにより、それより遠くにある星を隠してしまう「掩蔽」もあるわけですね。最近起こった星食としては、昨年1月18日のさそり座δ星の掩蔽が、比較的見やすかった現象でした。

 月は地球のまわりを約一カ月かけて公転しています。それは地球上から見ると、天球上を少しずつ移動しているように見えることになります。ですから、その日・その時間で月の見える場所は少しずつ違っているわけです。天球上を移動している月と見かけ上同じ位置に他の星が重なる場合に、月による「星食」がおきます。月がその星の前を通過することにより、星が隠される現象です。月のどの場所に隠されるかにもよりますが、長くて1時間くらい隠れている時間があります。

●今回の星食について

 今回は、夜半すぎに東の空から昇ってきたばかりの月によってさそり座α星アンタレスが隠されます。星食の観測にはその星の明るさと月齢、そして月の高度が関係するため、条件の良い時は少ないのですが、この星食は空の明るい都会でも楽しむことができ、小型の望遠鏡や双眼鏡でも見ることができる初心者の方にもわかりやすい天文現象です。

 星食は、見る場所によって見え方が違うという特徴があります。今回の星食では、概ね南に行くほど月の縁近くを通過していきます。北海道から鹿児島までの地方では、月に星が隠される様子を見ることができ、沖縄本島の那覇付近では、月がアンタレスをかすめながら通過する「接食」という珍しい現象も見ることができます。


今回のアンタレスの掩蔽
東京付近での様子のシミュレーション

2005年3月31日のアンタレスの掩蔽の時刻(日本時間)

地名

月の明縁に隠される

月の暗縁から出てくる

札幌

0:33

1:44

仙台

0:31

1:43

東京

0:29

1:40

大阪

0:27

1:33

福岡

0:26

1:23

鹿児島

0:29

1:21

那覇

 月すれすれをかすめていく「接食」となる 0:51最接近
明縁とは、月の太陽に照らされている(光っている)側の縁のことをいい、暗縁とは、月の太陽に照らされていない(光っていない)側の縁のことをいいます。明縁に星が潜入する瞬間は、月が明るいため見にくいですが、暗縁から出現する瞬間ははっきりと見ることができます。

●沖縄本島では接食となる

 今回の星食では、沖縄本島の那覇市等で「接食」として見ることができます。接食とは、月の向こう側にある星を月の縁がかすめるように移動していく現象で、月のクレーターなどの凹凸に星が隠されるため、時には星が何回も点滅して見られることがあります。1994年11月30日のスピカ食のときの様子がこちらのページにあります。古い画像のため画質はよくありませんが、この時は3分18秒の間に8回の点滅を見ることができました。今回のアンタレス食でもこのような様子を見ることができるかもしれません!。お近くにお住まいの方は是非観測してみてください。

●6年ぶりの一等星の星食 次回は8年後!

 今回の星食は、6年ぶりとなる一等星の星食です。全天には21の一等星がありますが、このうち月に隠されることがあるのは、このさそり座のアンタレスの他に、おうし座のアルデバランしし座のレグルスおとめ座のスピカの4つしかありません。今までにも書いてきたように、星食は月によってそのはるか向こうにある星が隠される現象ですから、天球上で月が地球からの見かけ上通る道(白道といいます)の近くにある星しか隠されないのです。

天球上での月の通り道(白道)が毎年変わる様子
クリックすると拡大します
1年分の月の通り道の移り変わりがと、
4つの一等星がどの時期に月に隠されるかがわかります

 しかし、実際には天球上の月の通り道は毎回少しずつ変わっています。これは、月が地球のまわりをまわっている軌道面が、地球が太陽のまわりをまわっている軌道面(黄道面・・・黄道=天球上で太陽が地球からの見かけ上通る道)に対して約5゜傾いていて、その傾く方角が約18年周期で変わるために起こります。このため、月に隠される星はいつも同じ星ではなく、ある期間に限って隠される現象が見られることになります。

 さらに、月は地球から最も近い「星」で、地球上の見る場所によっても天球上での位置が変わります。今回のアンタレス食でも、沖縄本島より西の地域ではアンタレスは隠されません。また、昼間の月が起こす星食はほとんど観測できません。一等星の星食を夜の空で良い条件で見られることは、非常にめずらしいことなのです。

月の軌道面の傾きが変わる様子
この傾きの周期が約18.2年
 今回のアンタレス食の次に日本で夜に良い条件で見られる一等星の食は、2013年8月12日のスピカ食までありません。是非この機会に一等星の星食を観測してください!。

●どこで、どうやって見える?

 今回の食は、南東の高度10〜20度程度の空で起こりますから、月が見える場所であればどこでも観測できます。都会の住宅地などでは、東に開けたベランダなどで充分見ることができる現象です。

 通常、星食の観測は、月と星の明るさの差が大きいため肉眼では見ることができません。今回は隠される星が1等星と明るく、月も比較的細いため、小型の望遠鏡や双眼鏡で十分に観測できます。

 0:00ごろから月を視野に入れて、その近くにあるアンタレスをあらかじめ見つけておきます。時間が経つと星は少しずつ月に近づき、月に飲み込まれるようにふっと消える様子が見られるはずです。月がまぶしくて星が見えにくいときは、ちょっと高めの倍率にして月の一部が見えるくらいにすると、月の裏側に入リ込む様子もじっくり見ることができるはずです。


東京での午前2時ごろの南東の空の様子
アンタレスが出現した直後はこのように見えるはずです

 1時間ほど経つと、今度は星が月の裏側から出てくる現象が見られます。この頃の月は地球照(太陽に照らされた地球の光が反射して、月の太陽に照らされていない部分がうっすらと見える現象)を確認するのは難しいので、星がどこから出てくるかを特定するのは難しいですが、予告も無く突然星が現れる様子をしっかりと見ておきましょうね。

 星食をはじめとした「食」は、とてもライヴ感覚のある天文現象なので、一度見てみるととても感動するものです。皆さんも是非ご自分の目で空の上で繰り広げられる天体ショーを確かめて見てください!。

●観測したら、報告しよう!

 国立天文台のHomePageでは、「アンタレス食を計ろう」キャンペーンを行っています。実際に現象を観測して、その様子を報告しましょう!。

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