2017年8月21日 北アメリカ大陸横断皆既日食

 2017年8月21日(月)(日本時間22日(火))、日食が起こります。今回の日食は、ハワイを含む北太平洋の東側と北アメリカ大陸のすべて・南アメリカ大陸の北部・北大西洋地域の大部分・アフリカ大陸の北大西洋沿岸および西ヨーロッパの一部までの広い範囲で見ることができ、アメリカ西海岸のオレゴン州から東海岸のサウスカロライナ州まで、北アメリカ大陸を横断する帯状の地域で皆既日食となります。

※この日食は、日本では22日の日の出前に起こるため、見ることができません。

2009年7月22日 
中国浙江省で見られた皆既日食
●日食はどうしておこるの?

 日食のお話をする前に、天文現象で言う「食」についてお話しておきましょう。文字通り、天体が「食べられる」現象のことをいいます。もちろん、誰かが星をパクパク食べてしまうわけではないので、何らかの自然現象が起きるわけです。

 有名なところでは、「日食」と「月食」があります。日食は、地球からの見かけ上太陽の前に月が入り込んでくることによって、太陽が月に直接隠される現象です。太陽と月と地球上での見る場所の位置関係により、太陽全体が隠されるものを皆既日食・見かけ上太陽の中に月がすっぽり収まってしまい、リング状に太陽の光が見える金環日食・太陽の一部だけが月に隠される部分日食の3種類があり、日本では2016年3月9日に部分日食がありました。

 一方「月食」は、太陽の光によって照らされている月が、地球の影の中に入ることによって見えなくなる現象です。日食とは違って、直接月を何かの天体が隠しているわけではありません。しかし、ちょっと視点を変えると、月から見たときに、太陽が地球によって遮られている状態、つまり月での日食が起こっていると考えられるわけです。

 これらの「食」は、宇宙空間での天体の位置関係が相互に直線上に並ぶことによって、より遠方にある天体が隠されることを差しています。日食の場合は、太陽・月・地球の順に並んだ時に起こり、月食の場合は、太陽・地球・月の順に直線に並んだときに起こることになります。

 なぜ、このように天体と天体が一直線上に並び、日食や月食が起こるのでしょうか?。その理由は月の公転が大きく関係します。月は地球のまわりを約一カ月かけて一周しています。それは地球上から見ると、天球上を少しずつ移動しているように見えることになります。ですから、その日・その時間で月の見える場所は少しずつ違っているわけです。
 その天球上を移動している月が、ちょうど太陽の手前を通過するときに日食が起こります。ですから、日食は必ず新月の日に起こります。

日食が起こるしくみ
太陽との距離は実際はもっと遠く、太陽はもっと大きな天体です。
太陽と月の地球上からの見かけの大きさがほぼ同じになる偶然から、
皆既日食や金環日食がおこります
●コラム● 皆既日食と金環日食の違いは?
 上の項で皆既日食と金環日食について書きましたが、どちらも太陽と月が重なるという現象は同じなのに、なぜ「皆既」と「金環」の違いが出るのでしょう?。
 その答えは、地球から太陽や月までの距離に関係します。皆既日食や金環日食は、地球からの見かけ上、たまたま太陽と月がほぼ同じ大きさに見える偶然のために起こります。しかし実際には、地球の公転軌道と月の公転軌道が真円ではなくわずかな歪みがあるため、時期によって太陽も月も見かけの大きさが微妙に違うのです。
 地球の公転軌道は離心率約1.67%の楕円軌道で、最も太陽に近づく毎年1月2日前後と最も遠ざかる7月2日前後では、約3.34%大きさが変わります。一方月は、地球の周りを単純に楕円軌道で回っているだけではなく、太陽の重力の影響も受けるため、軌道が複雑に変化します。このため、最も近いときと最も遠いときでは約8.85%も大きさが変わります。
 そのため、太陽を月が隠すタイミングが、見かけ上太陽より月が大きくなれば皆既日食・太陽より月が小さくなれば金環日食になります。大まかには、地球が太陽から最も遠ざかる7月前後は皆既日食が起こりやすく、最も近づく1月前後は金環日食が起こりやすいですが、月の大きさの変動は太陽の大きさの変動量より大きいため、実際には時期に関わらず皆既日食も金環日食も起こります。
●今回の日食について

 今回の日食は、アメリカ時間2017年8月21日(月)の白昼、太陽が空の高いところにある時間に起こります。日食は、地球のまわりをまわる月と太陽との位置関係によって起こるため、見る場所によって時刻も見え方もかわります。

 各地で日食が起こる時刻は下の表の通りです。食の最大のバックが赤になっている場所は、皆既食になる場所です。大まかに、西に行くほど早く隠されはじめ、隠され終わるのも早くなります。隠される部分の大きさ(食分)は、皆既食帯に近いほど大きくなります。
2017年8月21日(月)の日食の主な現象の時刻(現地時間)
アメリカ国内
地名
欠けはじめ
食の最大
欠け終わり
都市 時差
時刻
時刻(食分)
時刻
ハワイ ホノルル -10 06:11※ 06:35(27.4%) 07:25
アラスカ アンカレッジ -8 08:21 09:16(55.6%) 10:13
ワシントン
シアトル -7
09:08
10:20(91.9%)
11:39
オレゴン
ポートランド -7
09:06
10:19(99.2%)
11:38
セイラム -7
09:05
10:17-10:19(100.9%)
11:37
カリフォルニア サンフランシスコ -7 09:01 10:15(80.2%) 11:37
ロサンゼルス -7 09:05 10:20(69.0%) 11:44
アイダホ
ボイシ -6
10:10
11:27(99.4%)
12:50
アイダホフォールズ -6 10:15 11:32-11:34(100.6%) 12:58
ワイオミング
シャイアン -6
10:23
11:47(97.6%)
13:13
ジャクソン -6 10:16 11:34-11:37(101.1%) 13:00
ユタ ソルトレイクシティ -6 10:13 11:33(92.5%) 12:59
コロラド デンバー -6 10:23 11:47(93.4%) 13:14
ミネソタ ミネアポリス -5 11:43 13:06(86.1%) 14:29
ネブラスカ
リンカーン -5
11:37
13:02-13:03(100.2%)
14:29
カンザス
ウィチタ -5
11:36
13:04(93.6%)
14:32
ミズーリ
セントルイス※ -5
11:50
13:18(99.9%)
14:44
カンザスシティ※ -5 11:41 13:08-13:09(100.1%) 14:36
イリノイ シカゴ -5 11:54 13:19(88.9%) 14:42
カーボンデイル -5 11:52 13:20-13:22(101.3%) 14:47
テネシー
ナッシュビル -5
11:58
13:27-13:29(100.5%)
14:54
テキサス ダラス -5 11:40 13:10(80.1%) 14:39
ヒューストン -5 11:46 13:16(66.7%) 14:45
ミシガン デトロイト -4 13:03 14:27(83.1%) 15:47
ケンタッキー
ルイビル -4
12:59
14:27(96.1%)
15:51
ジョージア
アトランタ -4
13:05
14:36(97.2%)
16:01
ノースカロライナ
シャーロット -4
13:12
14:41(97.8%)
16:04
サウスカロライナ
コロンビア -4
13:13
14:41-14:44(101.1%)
16:06
チャールストン -4 13:16 14:46-14:48(100.4%) 16:10
ワシントンDC -4 13:17 14:42(84.5%) 16:01
ニューヨーク ニューヨーク -4 13:23 14:44(77.0%) 16:00
マサチューセッツ ボストン -4 13:28 14:46(70.2%) 15:59
アメリカ以外
地名
欠けはじめ
食の最大
欠け終わり
都市 時差
時刻
時刻(食分)
時刻
カナダ トロント -4 13:10 14:32(76.2%) 15:49
バンクーバー -7 9:10 10:21(85.9%) 11:37
メキシコ メキシコシティ -5 12:01 13:20(38.1%) 14:37
ブラジル ブラジリア -3 16:55 17:17(6.5%) 17:39
ノルウェー ベルゲン -1 19:39 19:49(1.9%) 19:59
イギリス ロンドン -1 19:40 20:04(10.4%) 20:10※
スペイン マドリッド -1 19:45 20:03(18.8%)
モロッコ ラバト 0 18:48 19:07(23.6%)
※時差は世界時との差で、ホノルル・ブラジリア・ラバト以外は夏時間を適用しています。
※ホノルルは、日の出時にすでに日食が始まっているため、欠けはじめには日の出の時刻を記載しています。
※セントルイスとカンザスシティは、市内を限界線が通っているため、場所によって皆既になったりならなかったりします。
※ロンドンは、食の最大のあと日食中に日没となるため、欠け終わりには日没の時刻を記載しています。
※マドリッドとラバトは、食の最大の前に日没となるため、食の最大に日没の時刻とそのときの食分を記載しています。

2017年8月21日のアメリカ各地での日食の様子
同じ時刻での各地の欠けかたのシミュレーション
月の影が北アメリカ大陸を通過する様子も同じ時刻でシミュレーションしています
太陽と月の位置の関係で、場所によって見え方が異なります
Java scriptの関係で上の図が見られない場合はこちら
※アリゾナ州は山岳部時間ですが、夏時間を実施していないため、
西部時間と同じ時刻になります。

●コラム● 日食や月食の予測はいつごろから?
 古代から、日食や月食などの現象は天変地異の前触れとして人々に恐れられていたり、また日食の後に太陽の輝きが戻ることで、復活を意味する現象として捉えられることもありました。例えば、古事記や日本書紀に現れる天照大神の岩戸隠れの伝説は、皆既日食によるものだと言う説があります。また、キリスト教の新約聖書のルカによる福音書23章44節にある太陽の光が暗くなったという記述も、日食に関係するものだと考えられています。このように、日食のような天文現象を宗教的な意味に結びつけ、その予測をすることで信仰を広めたという史実は世界各地にあります。
 このような日食や月食に周期的な法則があることは、実は紀元前6世紀ごろから知られていたようです。「サロス周期」と呼ばれるこの法則は、18年+10日ごとに日食や月食が起こるというものです。しかし、この法則を科学的に解明して正確に予測することができるようになったのは、地動説以後の18世紀になってからです。その後、サロス周期は地球と月の公転周期および軌道の傾きと歪みの関係により起こることが証明され、さらに地球の自転に関係する8時間分を追加すると、かなり高い精度で予測ができることがわかりました。この日食の1サロス周期前になる1999年8月11日には、ヨーロッパを中心とした地域で皆既日食が見られました。また、この1サロス周期後になる2035年9月2日には、中国の北京・北朝鮮の平壌・そして日本の石川・富山・長野・福島・群馬・栃木・茨城・埼玉・千葉の各県で皆既日食が見られます。

サロス周期についてより詳しく知りたい方は、Wikipedia 日本語 英語 (英語のほうがより詳細に記述があります)によくまとめられていますので、是非参照してください。

 現在は、天体観測技術の向上により、日食も月食も物理的な計算で予測することができ、将来100年程度までは、秒単位まで正確な予報を出すことができるようになりました。それでも、先日の大地震のような地球内部の変化による自転速度の変化や、地球や月の公転軌道の累積的な変化により、秒単位でのずれが発生します。
●どこで、どうやって見える?

 今回の日食は、アメリカ全土で食分(太陽の前に月が入り込んでくる部分=欠ける部分の大きさ)が最小でも58%と十分にあるため、その変化は肉眼でも十分確認できます。時間的にもお昼前後の太陽が空の高いところにあるときの現象なので、お天気さえよければどこでも見ることができるはずです。

 皆既食帯は、北アメリカ大陸を西から東に横断していて、オレゴン・アイダホ・ワイオミング・ネブラスカ・カンザス・ミズーリ・イリノイ・ケンタッキー・テネシー・ノースカロライナ・ジョージア・サウスカロライナの各州の、幅およそ100kmの範囲で見られます。下の地図は、Google Mapに今回の日食の皆既食帯を書き込んだものです。赤い線が食の中心線で、北と南のそれぞれの黒い線が、皆既食の北限界線・南限界線になります。中心線上の黄色のマーカーをクリックすると、その場所での食の中心時刻と皆既食の継続時間・太陽の高さが表示されます。
※Google mapへの書き込みの都合上、1km以内の誤差が生じる可能性があります。実際には、限界線より内側の場所を選んでください。限界線に近づくほど、皆既食の時間は短くなりますから、なるべく中心線に近い場所を選ぶと良いでしょう

アメリカNASA ゴダード宇宙飛行センター(GSFC) がより正確な推算をGoogle mapに書き込んだページをこちらで公開しています。各地での日食の時刻(世界時)も秒単位まで見ることができます。時差を含んでいないので、上記の表を参考に、各地の時差を計算してください。

※日食当日に、スマートフォン等に内蔵されたGPS機能を使って、自分のいる位置が皆既食帯の中かどうかを確認できるページをこちらに用意しました。必要に応じてブックマークしてお使いください。

 日食を見るための場所選びで最も重要なことは、「晴れていること」です。苦労して海外まで行っても、日食が起こるときに厚い雲で覆われていたら、日食を見ることはできません。
 インターネット上には、http://weatherspark.com/ などに、世界各地の降水量や湿度・晴天率・雲量・標高などのデータがあります。それらを参考に、観測地を選んでください。総じて、8月下旬は西海岸や内陸部は乾季にあたり、晴天率が良い傾向にあります。

 一方、皆既食の時間が長く続く場所のほうが、皆既日食をより確実に、ゆっくりと楽しむことができるという考え方もあります。この点では、西海岸より東海岸のほうが条件が良く、今回の日食で皆既食が計算上一番長く続くのは、イリノイ州のカーボンデイル付近の中心線で、2分40秒(暫定値)続きます。
皆既食帯付近の気象条件 (NOAAによる1974〜2012年の8月21日の平均値)
地名 気温(℃) 平均
雲量
雲量別時間割合
湿度
皆既
延長
最高 最低 0-3 3-7 7-10 最高 最低
オレゴン
セイラム 27
12
15% 54% 13% 19%
90%
38%
120
アイダホ
アイダホフォールズ 28 9 24% 51% 22% 28% 90% 22% 138
ワイオミング
ジャクソンホール 24 7 16% 65% 16% 19% 84% 26% 140
キャスパー 29 11 15% 53% 25% 21% 75% 20% 146
ネブラスカ
リンカーン 30 18 23% 50% 22% 27% 92% 49% 157
ミズーリ
カンザスシティ 31 21 19% 50% 23% 27% 85% 48% 159
セントルイス 30 21 49% 28% 37% 35% 90% 49% 160
イリノイ カーボンデイル 31 19 35% 32% 18% 28% 90% 49% 160
テネシー ナッシュビル 31 21 45% 24% 34% 32% 91% 48% 159
サウスカロライナ
コロンビア 32 21 58% 26% 35% 40% 95% 49% 156
チャールストン 31 25 35% 40% 20% 25% 98% 76% 154
※平均雲量は、日中の全天の雲の量の平均値です。
※雲量別時間割合は、雲量を少ないほうから0-3・3-7・7-10の3段階に分け、それぞれの時間の長さの割合を示したものです。雲量が測定できない時間が含まれているため、3つの段階を合計しても100%にならない地点があります。
※皆既延長は、地点に最も近い中心線での暫定継続時間(秒)です。
 また、皆既日食は、建物や山などに太陽がさえぎられず、皆既帯の中にさえいれば、街中でもどこでも見られます。皆既帯の中にある空港や駅であれば、日食の時間に間に合うように飛行機や列車・バス等に乗って行くだけでも、日食が見られることになります。テネシー州のナッシュビル国際空港は、皆既食帯の中心に近く、全米からジェット機が来る空港です。
 AMTRAK http://www.amtrak.com/ は、全米を走る長距離列車を運行していますが、皆既食帯の中にいくつかの停車駅があります。また、カンザスシティからセントルイスに向けて、ミズーリ川に沿って走る列車ミズーリリバーランナーからは、列車から皆既日食を楽しむこともできそうです。
 さらに、これらの空港や駅を基点にして、近隣の観光地等に足を伸ばして見るのも良いでしょう。アメリカでは、駅馬車を起源とする路線バスが多数走っており、グレイハウンド http://www.greyhound.com/は、全米の都市を網羅する長距離バスを運行しています。日本同様、長距離の夜行バスもありますから、うまく利用すれば日食当日の朝に皆既食帯の中の街に行くこともできるでしょう。
皆既食帯付近の定期旅客便が離発着している空港・AMTRAK駅
空港
AMTRAK駅
空港名 中心線か
らの距離
駅名
中心線か
らの距離
オレゴン
ポートランド国際空港 89km
セイラム駅
16km
レドモンド空港 51km
アイダホ
アイダホフォールズ空港 32km
ワイオミング
ジャクソンホール空港 0km
キャスパー空港 6km
リバートン空港 17km
ネブラスカ
リンカーン空港 50km リンカーン 49km
ノースプラット空港 34km ヘイスティング 29km
アライアンス空港 1km
グランドアイランド空港 13km
ミズーリ
カンザスシティ国際空港 40km カンザスシティ 58km
セントルイス国際空港 64km セントルイス 60km
コロンビア空港 2km インディペンデンス 52km
シデイリア 47km
ジェファーソンシティ 19km
ハーマン 20km
ワシントン 22km
カークウッド 48km
イリノイ カーボンデイル 10km
テネシー
ナッシュビル国際空港 40km
サウスカロライナ
コロンビアメトロポリタン空港 6km コロンビア 15km
グリーンビル・スパータンバーグ国際空港 45km ノースチャールストン 40km
チャールストン国際空港 40km
※欄
△印は皆既食帯の外で、限界線に近い空港・駅
○印は皆既食帯の中で、限界線に近い空港・駅
◎印は皆既食帯の中心に近い空港・駅
 もう一つ、皆既日食の楽しみ方の一つに、昼間は見ることができない星空が見えることも大きなポイントです。今回の日食では、皆既中の太陽のすぐ近くの東側にしし座の一等星レグルスがあります。西側の少しはなれたところには火星も見られるはずです。
皆既食帯の主な地点から見た皆既食中の星空のシミュレーション
オレゴン州セイラム
ワイオミング州ジャクソンホール
ミズーリ州カンザスシティ
テネシー州ナッシュビル
サウスカロライナ州チャールストン
※左は実際の明るさに合わせたシミュレーション・右はプリントアウトに適した白バックでの図です。
※それぞれの地点で皆既食中に空を見上げたときに見られる星を、3等星までプロットしてあります。太陽・月と各惑星がほぼ一直線上に並んでいるのがわかるはずです。
※それぞれの地点の中間で見る場合は、図を少し回転させると実際に見ている空と対照できるようになります。
※皆既中の太陽と月のすぐ近くにあるレグルスをはじめ、金星・木星や各1等星は、快晴であれば肉眼で確認できます。
※火星は地球から見て太陽の反対側にあるため、2等星程度に見えます。空の条件が悪いと見えないかもしれません。
※水星は地球と太陽の間にあって、輝いている面がほとんど見えないため、3等星程度に見えます。空の条件が良くないと見えないかもしれません。
 また、周囲が開けた場所であれば、遠くから少しずつ月の影が接近してくる様子や、皆既中に周囲の地平線だけが明るくなっている様子も見られます。太陽の光が徐々に暗くなっていくことや、皆既食独特の気温の変化や風により、野生動物の動きにも変化が見られることがあります。
 こうした変化を楽しむには、周囲が開けた平原や、山の中のほうが楽しめるかもしれません。この点では、中西部の大平原はたいへん良い条件になると思います。
●コラム● ツアーとセルフ どっちがいい?
 地球全体で見ると、基本的に年に2回は日食は起こります。そのたびに、日本では旅行代理店各社がツアーを企画し、大勢の日食ファンが参加しています。日食が起こる場所は毎回違い、治安面などで国内とは勝手が違うことも多く、閉鎖的な場所で観測をしなければならないケースもあり、日食の手配に慣れた旅行代理店が主催するツアーは、とても人気が高いです。
 しかし、ツアーでは団体行動が基本となるため、観測場所や時間の制約があることや、日食前後の観光場所などの自由度も低くなります。もし観測場所の天候が悪くても、簡単に場所を移動することも難しくなります。

 今回の日食は、皆既食帯が白昼の北アメリカ大陸を横断していく絶好の条件で、皆既食帯の中には、国際空港がある大都市もいくつか含まれていますから、必ずしもツアーに頼らなければならない状況ではありません。天候が悪かった場合などに目的地を晴れている場所に変更できることや、周辺の観光地等を自由にまわることができることなど、ツアーではできない臨機応変な対応もできます。アメリカではレンタカーも一般化していますから、それを利用すればさらに柔軟性が増します。但し、何か問題が発生したときには自分で解決しなければなりませんから、言語の問題も含めて、ある程度の解決力は必要になります。

 一方で、ツアーであれば、このような観測場所の天候や交通手段・宿泊・言語の問題など、すべて代理店やツアーコンダクタがやってくれるわけですから、安心して参加することができるでしょう。ただ、目的が通常の観光とは違い、天候や視界など、専門的な経験も必要なため、日食ツアーの企画経験の有無の差はあるかもしれません。
 また、日本の旅行代理店ではなく、アメリカまでの航空券を各自で確保して、アメリカ国内発の現地ツアーに参加するのもひとつの方法です。インターネット上のホテル予約サイトなどでは、人気の高い場所はすでに取りにくい状態になっていてますが、これらの宿泊施設は現地のツアー会社が確保しているところが多いですし、現地ならではの情報網でより快適な滞在ができるかもしれません。日本からのツアーより場所の選択肢も増えますから、柔軟性も高くなるでしょう。Google検索("solar eclipse tour usa 2017")などで情報を集めてみてはいかがでしょう?。

 ちなみに、このページを書いている本人は、日食ツアーには参加したことがありませんが、過去3回海外に日食を見に行って、3回とも皆既食・金環食を見ることができました。日食に限らず、海外に行くときは基本的にセルフアレンジだからということもありますが、やはり時間に拘束されるツアーは敬遠しがちです。 
●日食を安全に楽しむには・・・

 太陽は、光の速さで8分の距離にあるとはいえ、原子力発電所の数億倍の規模のエネルギーを発している巨大な核融合炉でもあります。太陽からは様々なエネルギーが私たちの地球に降り注いでいますが、その中には私たち人間に有害な放射線も含まれています。ですから、肉眼でそのまま見ることは大変危険です。まして望遠鏡を使って直接のぞくのはもってのほかです。肉眼で直接太陽を見ることは、失明の危険もありますので絶対にしないでください。
●コラム● 太陽を直接見ることの危険性
 私たち人間は、通常は日中の太陽をわざわざ凝視することはありません。太陽を直視すれば「まぶしい」という本能的な回避行動が働いて、太陽から目をそむけるはずです。それは、人間の生まれもって持つ防御本能と考えられます。
 しかし、その本能を抑えて見続けた場合どうなるのでしょうか?。2008年にブラジルのロンドリナという街で行われた宗教的儀式で、真昼の太陽をフィルター等の保護具を用いずに肉眼で長時間直視した24人に、網膜の一部や黄班が変性したり浮腫が発生し、視力が低下する等の症状が現れたと報告されています。この48
の眼(24人×両眼)のうち43の眼に何らかの障害が起こり、約6ヶ月間の治療により40の眼はほぼ元通りの視力に戻りましたが、残る3つの眼は視野の中に暗点が残ってしまったとのことでした。(ブラジル 科学電子ライブラリー SciELO "Occurrence of solar retinopathy after religious ritual in Londrina, Parana, Brazil"より)

 このような症状は太陽網膜症(Solar retinopathy)と呼ばれ、20世紀はじめごろから症例が記録されています。実はこれまでも、日食の観測をして太陽網膜症になったという症例が世界中で多数報告されており、裸眼で太陽を見たときに許容される曝露時間は、空の高いところにあるときには0.8秒以内という計算もあります。これらの長年の臨床結果を元にヨーロッパでは、太陽からの人間の眼に有害な光や放射線を反射・吸収する機能を備えた、安全に太陽を見るためのフィルターの国際規格が作られています。この規格に適合するフィルターを適切な方法で使用すれば、基本的に安全に太陽を見ることができます。
 では、どのようにして日食を観察すれば良いのでしょうか?。ここでは、その方法をいくつか紹介していきましょう。

 日食を見るために最も安全な方法は、直接太陽を目で見るのではなく、太陽の光を何かに投射して、それを観察する方法です。太陽からのエネルギーを直接目で受けることが無いため、安全に日食を見ることができます。

 投射法を最も簡単に実現する方法として、ピンホール法と呼ばれるものがあります。太陽の光を遮断する紙などに小さな穴を開け、それを通ってきた光を別の白い紙や布などに投射する方法です。ピンホールの穴はなるべく真円になるようにあけたほうが、欠けている太陽の形が鮮明に映し出されます。また、投射する距離に応じて穴の大きさを調節する必要があります。
 また投射法は、人為的にピンホールを作らなくても、自然に同じ原理で日食中の太陽の形を見ることができることがあります。例えば茂った木の葉っぱの間から見える木漏れ日が、日食中は丸ではなく欠けた太陽の形になって現れます。同様のことが、障子にあいた小さな穴等でも起こります。

2001年6月21日にザンビアの首都ルサカで見られた皆既日食の際に
南アフリカのハーテビーストーク電波天文台観測チームの
ルイス バレンズ(Louis Barendse)氏が撮影した投射法による日食
ピンホールで文字を作って太陽の光を白い布に投射した様子
ピンホールの一つ一つが欠けた太陽の形になっている



2012年5月21日に見られた金環日食での投射法による日食
木漏れ日が環のようになっている。
 しかしピンホール法では、太陽の像がピンホールの直径分ぼけてしまうため、日食中の太陽の形を鮮明に映すことができません。また、やはり投射されたものではなく自分の目で確かめたいという気持ちが出るのも当然のことと思います。そこで、太陽からの人間の目に有害な光や放射線をカットして、肉眼で太陽の光を安全に見ることができるようにしたフィルターが用意されています。この方法なら、直接太陽から来る光を安全な光に変えて肉眼で見ることができるため、ピンホール法のようにぼけた像にならず、鮮明な太陽を見ることができます。

 また、日食の観測には望遠鏡や双眼鏡を使って倍率を上げて見た方が、欠けはじめや欠け終わりのわずかな欠け具合や、時間とともに変化していく月の動きを楽しく見ることができます。そのために、望遠鏡や双眼鏡と併用して安全に使用できるフィルターも用意されています。

 さらに、これらのフィルターを使えば、カメラやデジカメ・ビデオカメラでの撮影も楽しめます。時間とともに変化して行く様子をデジカメやビデオカメラで連続撮影すれば、動画として楽しむこともできます。


 もちろん、望遠鏡にカメラやデジカメ・ビデオカメラなどを取りつけて撮影することもできます。月や惑星を撮影するときに使用しているカメラアダプタ等がそのまま使用できますから、この機会に是非チャレンジしてみてはいかがでしょう。

 皆既日食の撮影の時、特に気を付けなければならないのは、皆既食の直前のタイミングです。フィルターをつけたまま皆既食に入ると、カメラは真っ暗になってしまいます。皆既になる数秒から数十秒前に、瞬間的にフィルターをはずさなければなりません。ですから、フィルターの着脱が容易に、かつ確実にできるものを選ぶ必要があります。

 当社オンラインショッピングでは、日食を安全に楽しんでいただける太陽観測用のフィルター等を用意しています。このページで紹介しているフィルターは全て日食の観測にそのままご使用いただけます。この機会に是非お求めください。

商品は十分在庫をご用意しておりますが、現象の日時が近づくと、注文が殺到し品切れになることもあります。ご注文はお早めにお願い致します。

 このように、安全なフィルターなどを取りつけて太陽観測を行うことは、決してむずかしいことではありません。是非この機会に太陽観測にチャレンジしてみてはいかがでしょう。使用方法に十分注意して安全に日食観測をお楽しみください。
●コラム● ススをつけたガラスではだめなの?
 20年ほど前までは、日食を見る際に太陽の光を減光するために、ろうそく等でガラスに煤(すす)をつけて、太陽の光を減光して見ていました。また、写真用ネガフィルムの感光部分を使用したり、黒いプラスチックの下敷きを使っていたこともありました。

 しかし、これらの方法では、私たちが眼で見ることができる「可視光」を安全なレベルまで遮断することができても、太陽からの有害な光線や放射線は十分に遮断することができず眼に届いてしまうため、とても危険な方法であることがわかっています。太陽を直接見るためのフィルタの国際規格が作られたのも、このような危険な方法により太陽を見て、太陽網膜症になることを避けるためです。

 規格に適合したフィルターを使用して太陽を見れば、基本的には安全に日食を楽しむことができます。しかし、使用方法を誤ると太陽網膜症になる可能性もあります。このようなことにならないために、以下の点にも注意してください。

●フィルターを使っても、3分以上凝視しない
 太陽に限らず、光や熱などのエネルギーを発しているものを長時間凝視することは、眼への負担が多くなります。日食の変化を注意深く見ようとするがためにどうしてもじっと注視してしまいがちですが、太陽を見上げる時間はなるべく短時間で済ませ、小刻みに眼を休ませるようにしてください。

●フィルターをつけはずしするときには、必ず太陽から目をそむける
 太陽観察用のフィルターの濃度は、昼間の風景でもほとんど見えないほど濃いため、ついつけはずしするときに太陽の方を向いたまましてしまいがちです。必ず太陽のほうを向く前にフィルターをつけ、はずすときも太陽から目をそむけてからはずすようにしましょう。

●曇り空や低空でも危険
 普段、朝日が昇ってくるときや夕日が沈むときには、大気による減光によりまぶしくないため、直接太陽の光を見てしまいますが、この場合もやはり長時間見続けると太陽網膜症になる危険があります。あまり長く見つめないようにしましょう。また曇り空の時は、フィルターをかけてしまうと太陽の像が見えない場合がありますが、雲の流れで急に太陽が現れるときに大きな危険があります。できるだけフィルターをかけたままで見るようにしてください。

●カメラを通して見る場合
 ビデオカメラやデジカメなど、カメラのモニターで画像を確認する一眼レフタイプではないカメラの場合は、直接眼で太陽の光を受けることは無いため、眼への危険はありません。但し、カメラ本体を保護するために、フィルターは必ず取り付けてから太陽に向けてください。また、カメラを太陽に向けるときに、ついつい裸眼で太陽を見てしまうことがあります。カメラ本体の周辺に紙などで覆いをつけるなどして、直接太陽を見ないように工夫をすると良いでしょう。
 また、一眼レフタイプのカメラの場合は、直接太陽の光が眼に入ってくることになりますので、太陽に向ける前に必ずフィルターを取り付け、3分以上連続して見続けないように注意してください。

このページに記載の内容についてのご質問は、お気軽にこちらからお問い合わせください。

簡単アンケートにご協力下さい

 このページの内容は おもしろかった ふつう おもしろくなかった
  ためになった ふつう ためにならなかった
  わかりやすかった ふつう わかりにくかった
 この日食を 見たいと思う わからない 見たくないと思う
 望遠鏡や双眼鏡を 望遠鏡を持っている 双眼鏡をもっている どちらも持っている
  どちらも持っていない    
 ひとことどうぞ

このボタンを押しても、あなたの個人情報などは送信されません



最近の天文現象・新天体情報等へ戻る